【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201605
ふわりぷかり 山崎 聰
雪降りやまず一本ポプラの憂鬱
円周を見つめておれば春の水
三月がぽかんと立ってあまたの死
日脚伸ぶアメーバのように日脚伸ぶ
遠国へ逃げたし蕨餅食いたし
戦前といえば不忍のかいつぶり
一春灯ひとりのときをひとりでいて
春は来にけりピカソの絵皿にピカソ
ねむる木のまわりもねむり春耕す
あいつがぶらりかいつぶりふわりぷかり
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2016年2月号より
一過性恋心かも黄の公孫樹 和田 浩一
月夜茸硝子の舟に揺れながら 栗原 節子
黄落の街はルーペで覗くべし 森村 文子
ごうごうと地底の燃ゆる十三夜 山口 彩子
ひと束の十年過ぎぬ冬帽子 米田 規子
週末というだけで赤い大根 沖 みゆき
のぼさんの眼鏡のような後の月 鈴 カノン
天上は赤い実のほか何もなく 小川トシ子
うっすらとけものの臭い谷紅葉 あざみ 精
揺れている爪先立ちの十二月 大見 充子
<白灯対談より>
鶴唳やルージュで描くさようなら 多田せり奈
ローランサンの小犬とピアノ初御空 松村 五月
春疾風言問橋を人力車 志鎌 史
きもの解く記憶の中へもがり笛 笹尾 京子
梅ほのか小さな路地を曲がるとき 佐藤由里枝
仄暮れの街にともしび春近し 酒井眞知子
身の内の鬼も老いたり年の豆 相田 勝子
無心から溢れ出したる寒の水 森田 成子
国境を越えても同じ冬の村 蓮尾 碩才
春隣折り紙の蝶すこし動く 土田美穂子
春浅し最後のさいご夢のなか 笹本 陽子
大寒の真っただ中を軍用機 中野 充子
手品師がひらひら逝ってチューリップ 大竹 妙子
息を呑む五百羅漢図春の地震 川口 史江
百歳の筆致のたしか春に入る 辻 哲子
【山崎主宰の編集後記】
六十年前に、”身捨つるほどの祖国はありや”と詠ったのは、早世した寺山修司である。(歌集『空には本』(昭和33)所収、<マッチ擦る束の間海に霧深し身捨つるほどの祖国はありや>)
さらには現在、安保法、原発、沖縄米軍基地、そしてオリンピックに数百億円を支出しながら”保育園落ちた日本死ね”の声に有効に向き合うことすらできない、そんな国に私達は生きている。
そういう一般国民の生き難い国の中で、心の詩である俳句を作ることの意味を、ぜひしっかりと考えて欲しいと思う。 (Y)
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