【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201802
ゆらゆらどん 山崎 聰
華やいであと散り散りに紅葉狩
木枯し一号ゆらゆらどんと坐りいて
極月のまっただなかの玉子焼
十二月八日深入りすれば風哭いて
何の咎月山ははや雪を被て
数え日の風のなかなる一老人
あとしばらくは生者の側に年暮るる
十二月まっ逆さまに堕ちてゆく
山に棲み海を恃みて玉子酒
山すでに深き眠りに冬至粥
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2017年11月号より
乗れと云ふ船現るる熱帯夜 石倉 夏生
ぱたぱたと仕舞われている祭かな 森村 文子
蝉しぐれ不意に日の丸よぎりけり 渡辺 澄
踏んばって泣いているなり日輪草 米田 規子
重きもの軽くとはこの大夏野 加藤千恵子
青いままの記憶いくつか山棟蛇 小川トシ子
海底に山並眠る熱帯夜 西 博子
揺蕩えば稲の匂いのその昔 山口美恵子
崩落のあとの夕暮独活の花 楡井 正隆
柩なら銀河に浮かべとりけもの 大見 充子
<白灯対談より>
紅い帯むらさき小袖菊人形 森田 成子
突然に少年が来て小六月 廣川やよい
朽ち葉石ころ夭折の一詩人 大竹 妙子
たおやかにしなやかに生き秋桜 中野 充子
北窓を塞ぎて北の星見えず 相田 勝子
梨むいてわからぬニュース聞いている 笹本 陽子
天使おりたか欅そこだけ黄ばみたる 波多野真代
眼裏に白い花びら林檎剥く 土田美穂子
居酒屋の裏に回れば冬の川 塩野 薫
十三夜紙の匂える本開く 小林多恵子
ため息はポインセチアの火の中に 大森 麗子
落葉踏むヒールを鳴らしながら踏む 川口 史江
小春の日赤いリュックに哲学書 水谷 智子
立冬や空気かすかに重くなり 江口 ユキ
亜麻色の光の中をマスクして 原田 峯子
【山崎主宰の編集後記】
俳句を日記代わりの身辺雑記と心得るか、ともかくも文芸の端くれと考えるか、前者は手法的には見たものを中心に書くことになろうし、後者は言葉をだいじにして俳句を書く、とまあきわめて大雑把に云えばそんなことになるのではないか。
もちろん俳句は庶民の詩であって、いろいろな人がいろいろな形で楽しめばよいわけだから、どちらが良い悪いということではなく、作者の詩ごごろの有無ということになるのだろう。
俳句はテーマや手法ではなく、つきつめれば作者の詩ごころが問われているのである。 (Y)
コメントを残す