【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202204
おおぜいで 山崎 聰
いっせいに柿色づきぬちちよははよ
とおい日のことも唐辛子ぶらさがる
いつからかにんげんあかく秋の虹
空青く木の柿あかく甲斐の谷
日の当るそこだけが冬峡の村
冬の陽がゆっくりのぼり彼はいま
もっと近くで見たいと思う冬の虹
座ったりしゃがんだりして冬の山
山は雪かかの村の人恙なきか
おおぜいで走り出すから雪が降る
【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202204
ふんばって 米田 規子
YOASOBIの「夜に駆ける」を弾く余寒
あともう少しふんばって冬木の芽
バレンタインデー髪艶めいて少女たち
きさらぎのきらきら過ぎて青海原
本ノート鉛筆メガネ春遅々と
晴天にしんそこ独りきなこ餅
紅梅やよきこと一つ大切に
春寒の髪を束ねて稿さなか
消しゴムのまあるくなって日永かな
いろいろな赤の花束あたたかし
【山崎名誉主宰の選】
<火炎集>響焔2022年1月号より
ひそやかに瞳のなかの月明かり 森村 文子
昨日より今日やわらかく虫の闇 加藤千恵子
枯蟷螂本気の色になりにけり 中村 克子
正解に辿り着けたら台風圏 松村 五月
たおやかな博多人形いなびかり 河村 芳子
耳鳴りのたとえば弾け鳳仙花 大見 充子
柔らかい言葉の色に柿落葉 小川トシ子
彼岸花昭和の路地のいきどまり 石井 昭子
秋夕焼古書の匂いの裏通り 小林多恵子
十月や絵本のなかの赤い耳 北川 コト
【米田主宰の選】
<火炎集>響焔2022年1月号より
ひそやかに瞳のなかの月明かり 森村 文子
切株の夢の中なり小鳥来る 中村 克子
二十日月笑っているか幸せか 松村 五月
秋ひと日空へ向かって坂のぼる 波多野真代
柔らかい言葉の色に柿落葉 小川トシ子
ねこじゃらしひとりぼっちが集まって 秋山ひろ子
透きとおる青空金木犀の今日 楡井 正隆
彼岸花昭和の路地のいきどまり 石井 昭子
おろおろと褒められもせず暮の秋 小林 基子
降る雪にことりことりと母灯す 吉本のぶこ
【米田主宰の選】
<白灯対談より>
寒月をかじればクールミント味 横田恵美子
煤逃や本屋のだれも背を向けて 池宮 照子
雪降れりチャイコフスキーの大地から 牧野 良子
波間からそれぞれの今日初日の出 北尾 節子
向き合いてボックスシート旅始 鹿兒嶋俊之
今ここに在ることだけを寒椿 酒井 介山
探梅の川音に沿う真昼かな 佐藤千枝子
初詣いつもの店の鳩サブレ 金子 良子
【白灯対談の一部】
寒月をかじればクールミント味 横田恵美子
極寒の夜空に冴え冴えと輝く月は、人を遠ざけるかのように孤高の表情をしている。そして触れれば手が切れそうな鋭い光を放っている。そんな〝寒月〟を、作者はちょっと違った視点で捉えとてもユニークな一句に仕立て上げた。
掲句は、月を齧るという非現実的な行為を俳句の中で軽々と詠ったのだ。句作りに自由という翼を手に入れたのだろうか。〝寒月をかじれば〟どんな味がした?と聞きたくなる。〝クールミント味〟と即座にステキな答えが返ってきた。空想の世界で遊んでいるような楽しい一句だ。今後も自由の翼を大いに広げて様々な俳句を作ってみよう。
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