【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202207
うしろから 山崎 聰
老化とは死に至る道月夜茸
芒穂に村を出るとき傘さして
ところどころ街の灯も見え大雪の朝
雪にとんで赤青きいろ子供たち
東京も信濃も雪の日曜日
いちにちさびし一年迅ししずり雪
うしろから大きな声がして立春
ももさくら散って人の世はじまりぬ
立春を過ぎて十日の白い雲
晩春というにはさびし朝の雲
【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202207
柿 若 葉 米田 規子
ひと息ついて春愁に包まるる
チューリップ愉快に乱れビルの街
遠き日や春のセーターははの色
竹皮を脱ぎ十年のパスポート
のどとおる白湯のまろやか柿若葉
鳩とハトときどき雀麦の秋
絵は苦手ですはつなつの自由帳
そら豆の一粒ひとつぶ物思い
青蔦やするする書けるボールペン
ズッキーニじゅわっと焼ける雨の昼
【山崎名誉主宰の選】
<火炎集>響焔2022年4月号より
みずいろの夢を見ている浮寝鳥 森村 文子
大寒をくるりくるりとタワーの灯 加藤千恵子
おずおずと月に近づく齢かな 中村 克子
縮みゆく己れ淋しく冬の金魚 大見 充子
ポケットにブラックホール寒木立 山口美恵子
砂山の心底さみしお月さま 鈴木 瑩子
駅に向く靴音十二月八日 楡井 正隆
心柱ときに揺らぎてアマリリス 中野 充子
春時雨湯島裏窓ほの赤く 廣川やよい
寒波くるちりひとつなき老人に 北川 コト
【米田主宰の選】
<火炎集>響焔2022年4月号より
花札の裏は暗黒春の雪 石倉 夏生
冬ざくら見えない言葉みるように 森村 文子
侘助のあといくつ咲くいくつ散る 加藤千恵子
冬夕焼ぼおんぼおんと地球鳴る 中村 克子
雑踏やそろそろ雪の降るころか 松村 五月
去年今年浅き眠りはあさきまま 河村 芳子
童心やポプラの枯葉降ってきて 波多野真代
良き夢のゆめのなかなる二日かな 小川トシ子
寒波くるちりひとつなき老人に 北川 コト
雪の降り始めはきっと天国から 藤巻 基子
【米田主宰の選】
<白灯対談より>
まるい風とがった風も立夏かな 北尾 節子
父母の逢瀬のあたり桜東風 齋藤 重明
前途という光背まとい卒業子 池宮 照子
星になりたい桜貝ポケットに 牧野 良子
春暁の向う岸から牛の声 鹿兒嶋俊之
先生と信号渡る蝶の昼 原田 峯子
ほろほろと落雁崩れ春の雷 横田恵美子
右見れば左が伸びて草むしり 金子 良子
【白灯対談の一部】
まるい風とがった風も立夏かな 北尾 節子
〝立夏〟を迎える頃、日本は新緑が美しいだけでなく、木々の緑を揺らしている風もまた大変心地好い。
風に形があるように〝まるい風〟〝とがった風〟と、見えないものを見えるように詠ったところが良くて、とても楽しい一句になった。作者の豊かな想像力が描いた風の形なのだ。
掲句は〝まるい風とがった風も〟で軽い切れがあり、一呼吸してから〝立夏かな〟と着地する。上五中七のフレーズと〝立夏かな〟の措辞に直接的な関わりはないのだが、微妙な繋がりを感じるのだ。説明でもなく報告でもないこの句は軽やかで、読後に〝立夏〟のよろこびのようなものが心に響く。
今を楽しんでいる作者の心が見える作品だと思う。
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