響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2022年8月号より

響焰2022年8月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202208

さくら散る     山崎 聰

立春を過ぎ朴の葉のまるいところ
海よりも山よりもなお春空よ
さくら散って見えるものみな眩しい日
高原の牧場遠く山ざくら
ざわざわとかついっせいにさくら散る
人いつも不意に奈落へ春の夜
さくら散ってなにも見えなくなりにけり
晩春というさびしい日のコーヒー
大きな空にちぎれ雲飛びみどりの日
青空はいつも遠くに朴の花

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202208

麦   星       米田 規子

にっぽん青天新茶の封を切り
我もまた弱者のひとり青葉木菟
走り梅雨バジルを摘みて香る指
少年に銃十薬の花の闇
よわき者らへ六月の風のうた
麦星やジャズピアニスト獣めき
つんつんと元気まひるの青木賊
短夜の黙って食べるおとこなり
白南風や一身上という訣れ
はたらいて働いてひるがおに夜

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2022年5月号より

樹の洞に枯葉の溜まるふるさとよ     栗原 節子
少年の涙のかたち冬の蝶         森村 文子
いつからの無口ひひなもはらからも    加藤千恵子
にんげんの影につまずく冬の蝶      中村 克子
立春大吉月の兎がまろび出て       大見 充子
ひとりひとりの帰路に漂う冬帽子     河津 智子
きさらぎの鏡のなかの向う側       鈴木 瑩子
つまずいて身の内揺らぐ冬の月      石井 昭子
大空に帰路という道雪あかり       大森 麗子
生国おもう雪のにおいと雪のいろ     中野 充子

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2022年5月号より

梅白し無菌の風を深く吸ふ        石倉 夏生
すこし寒い春風のよう君は        森村 文子
奪いあう母の膝なり春兆す        渡辺  澄
校庭に晩秋という落し物         中村 克子
青春は二月の駅に吹き溜まる       松村 五月
きさらぎの河馬の薄目をあけるごと    大見 充子
泣き面や眩きほどの寒の月        波多野真代
動かない山がうしろに日向ぼこ      秋山ひろ子
素気なく別れてきたが雛の家       相良茉沙代
雨降らば雨やわらかき二月尽       石井 昭子

【米田主宰の選】

<白灯対談より>

影として頭上をわたる夏の蝶       池宮 照子
よく晴れて四十九日の蝶二頭       齋藤 重明
不可もなく可もなく春の無音の日     北尾 節子
半分は海の風なり鯉のぼり        牧野 良子
葉桜の奥の暗がり石の塔         鹿兒嶋俊之
年月のべっこう色の夕焼けかな      増澤由紀子
風五月おむすび一つ食べ残す       金子 良子
花冷えや焼きたてパンと珈琲と      原田 峯子

【白灯対談の一部】

 影として頭上をわたる夏の蝶       池宮 照子
 異次元からふいにやって来て、タテにヨコにひらひら舞って、しばらくするとふっと視野から消えている。蝶々の飛行ルートはなかなか人間の目で捉えることができない。優雅に見えるその飛翔だが、懸命に薄い翅を動かしているのではないだろうか。
 掲句の上五〝影として〟と云う導入は、最初から現実を越えた存在としての〝夏の蝶〟を詠おうとしていると思った。作者は〝夏の蝶〟を見ていると云うより感じているのだ。真夏の明るい陽射しの中を軽やかに飛んでいる蝶とは違って、この句の〝夏の蝶〟に重さを感じるのだ。たぶんそれは作者の心象風景の〝夏の蝶〟だから。頭上をやや重く飛ぶ〝夏の蝶〟は作者の心の翳でもある。いろいろなことを考えさせられる深い一句だと思う。
 <辺縁の国人として沖縄忌> 沖縄に住む作者ならではの一句として注目した。

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