響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2024年4月号より

響焰2024年4月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202404

味 噌 蔵     山崎 聰

一日は早し冬のくもり空はなお
凧揚がる天まで上がりそして自由
急ごうよ西の方から雪がくる
東京に大雨予報冬の浪
いっせいにわれもわれもと雪野原
雪国にひとつ灯りてりんごの木
霙降る夜をあるいて港まで
昼の雪夜は小止みに村はずれ
味噌蔵も酒蔵もある峡の冬
信濃雪東京朝から曇り空

 

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202404

赤い椅子       米田 規子

ふきのとう時間と云うは宝物
寒薔薇一輪のみのオーラかな
春めいている二階の赤い椅子
真昼間のおろして甘き春大根
詩ごころの目覚めるころか春の雪
もの書くに切羽詰まって春一番
春愁やこのごろ軽い鍋が好き
遠くにある夢のくらしと春の星
なぐさめの雨かとおもい落椿
木の芽風つぎのページは何の色

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2024年1月号より

ゆれることだけに熱中ねこじゃらし    石倉 夏生
茅葺きの大きな家の秋桜         栗原 節子
山眠る木々は両手を遊ばせて       渡辺  澄
ひょんの笛少年海と出会いけり      加藤千恵子
公孫樹黄葉の空があり空を見る      小川トシ子
休日のやわらかい朝金木犀        秋山ひろ子
星流れゆっくりと世界は傾ぐ       河津 智子
虫時雨廊下の奥を凝視せり        相田 勝子
木犀の闇につまずきまた歩く       小林多恵子
やすやすと人は壊れて金木犀       大竹 妙子

 

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2024年1月号より

夕焼とわたしのあいだ眼鏡置く      松村 五月
いつからか夜空見るくせ白秋忌      大見 充子
喜八の忌運河に沿いて鯛焼き屋      蓮尾 碩才
さわやかや上り坂なら一呼吸       河村 芳子
公孫樹黄葉の空があり空を見る      小川トシ子
言の葉の掴めば雫れ水の秋        秋山ひろ子
晩秋の横にただよう山の雲        楡井 正隆
秋高しさらりと乾くぼんのくぼ      中野 充子
少年に忽然と会う茸山          齋藤 重明
満月や水は角を失いて          池宮 照子

 

【米田規子選】

<白灯対談より>

万物の音静まるや初明り         横田恵美子
一月一日足下の暗き穴          酒井 介山
歌留多とり負けて泣く子に日暮はや    中野 朱夏
冬の蜂意志ある限り歩きけり       牧野 良子
若菜野へ流れ水音ひかり合う       増澤由紀子
寒夕焼ビルめらめらと焦げそうな     原田 峯子
初詣こころ平らにして帰る        菊池 久子
福寿草八十路のとびらスルリ開き     長谷川レイ子
去年今年想い出だけが彷徨えり      伴  恵子
生かされて一筆添える年賀状       辻  哲子
ストーブの大きなやかん独り言      金子 良子
きさらぎや背に房総の海光る       朝日 さき
手鏡をじっと見つめる雪女        山田 一郎
ふるさとへ向かう単線山眠る       鷹取かんな
毎朝の筋肉体操寒卵           原  啓子
山茶花や垣根づたいに学童児       櫻田 弘美

 

【白灯対談の一部】

 万物の音静まるや初明り         横田恵美子
 元日の早朝、東の空から太陽が静かにのぼり、曙光があたりをほのぼのと照らす。新しい一年の始まりである。
 掲句は〝初明り〟に精神を集中して詠まれた俳句で、とても荘厳な雰囲気が漂う。また一句の拵え方として、中七の「や」切れに力があり効果的だと思った。万物の音が静まりほぼ無音の世界に現れる太陽はさぞ神々しいだろう。海辺や山頂に出向き、その時を待つ人々もいる。〝初明り〟に大いなる「気」をもらい一年の無事を祈るのだ。

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