【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202401
某 日 山崎 聰
夕ざくら見てからの闇帰りみち
山深ければ尊しみどりあればなお
青葉騒青梅駅頭杖持って
突然に大きな音がして八月
山のこえ地のこえ夏の雨が降る
八月の越後の山の大神(おおみかみ)
駅頭緑野待っていたように雨
八月十五日もの云わぬもの海へ
関東の真ん中におり緋のカンナ
八月某日東京の空あかあかと
【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202401
しめじ舞茸 米田 規子
七十路の真ん中あたり柿たわわ
むすめ来て古家ふくらむ夜長かな
手の温みマイクに残り冬隣
ぴかぴかの地魚の寿司冬はじめ
芒原三百六十度の不安
なにやかやごろんごつんと冬に入る
しめじ舞茸パスタに絡め遅い昼
たましいは天に冷えびえと墓の前
年月の色にとなりの次郎柿
葛湯吹くずーんとこころ沈む夜
【山崎名誉主宰の選】
<火炎集>響焔2023年10月号より
ぽっかりと今を見つめる土偶の眼 石倉 夏生
凌霄花たぐれば遠き山や川 加藤千恵子
稲刈られ地球ゆっくり力抜く 中村 克子
昨日より今日のあかるさ黒揚羽 小川トシ子
土匂う草匂う朝梅雨の明け 佐々木輝美
半夏雨人の重さに驚きぬ 山口美恵子
古里へ近付く列車針槐 楡井 正隆
きょうのいろ明日のかたちサクランボ 川口 史江
黒南風に吹かれ戦争展出口 藤巻 基子
夏の声明るい方へこだまして 北尾 節子
【米田主宰の選】
<火炎集>響焔2023年10月号より
梅雨月夜どこの鍵かと考える 和田 浩一
螢狩やがて螢になる二人 石倉 夏生
駅前の賑わいを避け父の日来 渡辺 澄
あじさいに触れあじさいの暗さかな 松村 五月
梅雨晴間二人暮しに新局面 北島 洋子
ていねいに生きて西瓜に塩ふって 河津 智子
放蕩や男も老いて夜店の灯 鈴木 瑩子
水底に灯りの揺らぐ螢の夜 大森 麗子
恐竜のパジャマ寝返る夏休み 鹿兒嶋俊之
今生のつづきにひょんの笛を吹く 吉本のぶこ
【米田規子選】
<白灯対談より>
再会のふたりのゆくえ曼殊沙華 酒井 介山
空井戸の滑車古びて秋しぐれ 増澤由紀子
焼け跡のテネシーワルツ星月夜 牧野 良子
秋湿り埃うっすらカフェの隅 伴 恵子
秋日和母のあとさきあひる二羽 中野 朱夏
秋灯下砕けて抜けるコルク栓 横田恵美子
妻と記す介護申請日日草 菊池 久子
黙ることもひとつの術か猫じゃらし 金子 良子
【白灯対談の一部】
再会のふたりのゆくえ曼殊沙華 酒井 介山
毎年秋のお彼岸のころになると、約束したかのように曼殊沙華が咲き始める。その姿、形が非常に独特なので、俳人はその魅力に惹かれ、大いに詩ごころを刺激される。
掲句はややドラマ仕立てとも思える詠い方で、何かが始まる予感がするのだ。しかし、〝再会のふたりのゆくえ〟で切れが働いているので、語りすぎてはいない。〝ゆくえ〟の措辞に詠み手それぞれの想像がふくらむ。上五中七のフレーズを十分に堪能したあと、ゆっくりと〝曼殊沙華〟にたどり着き掲句のふたりは男女かもしれないと思う…いや、最初からそう読んでいたかもしれない。
結句は「秋桜」「秋の薔薇」「大花野」などいろいろ置いてみたのだが、今ひとつ響き合わない。〝曼殊沙華〟だからこそ、一句として読み応えのある作品になった。
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