響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2024年5月号より

響焰2024年5月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202405

お 元 日     山崎 聰

きょうからは東京住まい真桑瓜
みちのくへ東京は秋霖のなか
公園の入口さむし峡はなお
雪降りしきり青函連絡船の甲板(デッキ)
さむい夜あたたかき人むこうから
雪おろし替わり信濃の村はずれ
初日の出山に登って彼を待つ
お元日東京の空はぐれ雲
みちのく雨東京も雨二日かな
山さびし白山茶花の白はなお

 

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202405

花椒の香り       米田 規子

詩はいつも遠くにありて春の草
落日のすさまじき赤冴返る
吾に風尖りくる日の梅白し
句集編む雨にきらきら桜の芽
水ぬるむ病院帰りの足軽く
春星のきらめく荒野しるべ無く
楓の芽この世の空気つめたかろ
白粥にたまごを落とし春愁
花椒の香りのほのか朧月
一時間に一本のバス花の昼

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2024年2月号より

黄落や参道は風吹くばかり        栗原 節子
戦争のことそのほかのこと温め酒     中村 克子
懐の深きところも時雨けり        松村 五月
青春は青きゆらゆら月に吼ゆ       河津 智子
黄菊白菊母ちゃんと呟けば        佐々木輝美
昨日より近くに野山秋の声        楡井 正隆
それならば男ら檸檬ぶつけ合え      小林多恵子
すっぽりと師走の駅舎赤い傘       廣川やよい
ほどほどに良き日でありし十三夜     浅野 浩利
柿花火加えて景色広がりぬ        北尾 節子

 

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2024年2月号より

黄落や参道は風吹くばかり        栗原 節子
サーカスのかつて来た町銀杏散る     加藤千恵子
晩秋や甘いものなど配られて       松村 五月
人の世へ散るには惜しき夕紅葉      大見 充子
赤ん坊抱いてまほろば冬桜        波多野真代
きょねんより今年さびしく秋桜      河津 智子
黄菊白菊母ちゃんと呟けば        佐々木輝美
近江路を近江の訛木守柿         小林マリ子
からころと旅する菜の花の斜面      吉本のぶこ
たぶたぶと京浜運河十三夜        藤巻 基子

 

【米田規子選】

<白灯対談より>

何もない空へ真っ赤な冬薔薇       鷹取かんな
未来より今がいちばん根深汁       金子 良子
煩悩の混み合っているシクラメン     原田 峯子
春の日のたて型よこ型信号機       朝日 さき
けさの夢壊れぬように干す蒲団      牧野 良子
まっさきに黄色咲かせて房総春      増澤由紀子
思い出をつなぐ金継冬うらら       原  啓子
新年の歩幅で来たり隣の猫        菊池 久子
風花や木彫りの仏笑みたもう       中野 朱夏
梅ふふむ柵に小さき投句箱        横田恵美子
しずごころ失せし月日や雪割草      酒井 介山
二月の雪ユトリロ色のベーカリー     長谷川レイ子
紅梅白梅となりから浪花節        山田 一郎
春が来るカツカツカツとハイヒール    伴  恵子
蒼空へ隠れたるもの想う春        加藤  筍
雪しんしんと遠い思い出祖母の家     櫻田 弘美
フィリピンへ孫を見送り春の雪      岩井 糸子

 

【白灯対談の一部】

 何もない空へ真っ赤な冬薔薇       鷹取かんな
 きれいに晴れ上がった冬の青空。吸い込まれそうなその青空はまさしく〝何もない空〟である。しかし、空を見上げる人の胸中には様々な思いが湧き上がるのだ。例えば今の地球に起きている悲惨な戦争や、元日に日本中を驚かせた能登地震などの他にも地球温暖化、新型ウイルスとの闘いもあり平和な状況からはほど遠い。また人間の悲しみや喜びも〝空〟は受け止めてくれるのだ。
 掲句は先ず〝何もない空へ〟と詠われている。そこで大きな切れがあり、十分な間合いを取った後〝真っ赤な冬薔薇〟と眼前の薔薇に着地した。作者の祈りや希望がこの冬薔薇に託されているのだ。特に〝真っ赤〟という措辞にエネルギーがある。作者の熱い思いがある。

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