響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2022年9月号より

響焰2022年9月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202209

葉ざくら     山崎 聰

死もすこし見え大雪の朝の景
明石町葉ざくらの路地からこども
葉ざくらの川沿いのみち異人館
さくら吹雪のうしろ青空こどもたち
キエフは遠し葉ざくらの道なお遠し
ちちよははよ葉ざくらの街過ぎるとき
何するということもなくみどりの日
遠く近く亡きもののこえ若葉雨
新緑が遠くにありてふつうの日
山峡に住んで十年ほととぎす

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202209

シナモンロール       米田 規子

夏蝶のワルツ右脳を喜ばす
入道雲B4出口に辿り着き
片蔭に身を細くして大都会
夏の少女よ黒髪のやや重く
この街の空に親しみ立葵
緑蔭に散らばり詩人らしくなる
のび放題の夏草とのっぽビル
たそがれて曲り胡瓜のひと袋
スカートに絡む海風晩夏かな
香りよきシナモンロール秋隣

 

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2022年6月号より

深々と木の葉を沈め蝌蚪の陣       栗原 節子
亀鳴くやかなしみは人に残りて      渡辺  澄
抜け道の先のくらがり孕み猫       小川トシ子
雪の匂い水の匂いの春の家        秋山ひろ子
ふるさとの駅がらんどう春北風      山口美恵子
海へ行くまっすぐな道春夕焼       楡井 正隆
小さき街へ小さき春くる赤いくつ     石井 昭子
躓きの先に見えくる春の虹        中野 充子
春の風街角曲り花屋まで         森田 成子
秩父嶺のふわりとうかぶ春夕焼      小林多恵子

 

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2022年6月号より

探梅の人差指にみな従ふ         石倉 夏生
雛飾り戦をにくむ母であり        渡辺  澄
遠き日へ雛を帰し海を見に        加藤千恵子
いち日はやさしい色の毛糸編む      松村 五月
初蝶ゆらり硝子玉やや白濁        河村 芳子
エリカ咲く涙色してウクライナ      大見 充子
三月の雲なにもなかったように      波多野真代
朧夜のにおいのひとつ玉三郎       鈴木 瑩子
虚ろなる東京の空ふきのとう       大森 麗子
ふらここのゆれ残りたる夕間暮      浅野 浩利

 

【米田主宰の選】

<白灯対談より>

薫風や犬に従う一万歩          牧野 良子
真っ赤なトマト誰からも愛されて     原  啓子
木道にひと刷毛の風梅雨晴間       池宮 照子
夏木立あるいは神の通り道        北尾 節子
薔薇園や裸像の弾く日のひかり      鹿兒嶋俊之
頑張って生きているかと百千鳥      原田 峯子
百年が壱人生ぞ竹の花          畑  孝正
紫陽花やベンチに杖の忘れもの      金子 良子
トンカツを切る音キャベツ刻む音     黒川てる子

【白灯対談の一部】

 薫風や犬に従う一万歩          牧野 良子
 この句の作者は犬派で、日々愛犬との生活を楽しんでいるようだ。ペットのお世話をする大変さはあっても、それ以上に愛犬と触れ合うことで幸せを感じていることだろう。
 掲句で注目したのは〝犬に従う〟と云う措辞だ。犬は人に従順な動物だと思うが、この句では立場が逆で作者が〝犬に従う〟ことを詠んだ。風薫る気持ちの良い日に作者と愛犬は颯爽と〝一万歩〟を歩いた。健康な犬と元気な作者が見えてくる。喜んで〝犬に従う〟感じが微笑ましい作品だ。
 同時発表の<鉄線花空家になってからのこと>にも共鳴。なにやらミステリアスな雰囲気を醸し出しており〝鉄線花〟の斡旋も良かった。

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