【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202210
無 聊 山崎 聰
明日が見えるはずもなくももさくら
これからを思えばさびし花のあと
さくら散り鳥啼き海山暮れはじむ
青葉木菟ひとこえ鳴いて無聊なり
海山のあわいに光みどりの日
東京は朝から晴れて梅雨の入り
青葉騒ひそひそといる彼彼女
五月の雨郵便局を過ぎてすこし
ふたつみつ青梅ころげああ無情
彼彼女そしてわれらに夏来たる
【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202210
栗色の髪 米田 規子
夕蟬の声のさざなみ風生まる
ゆく夏の木陰に集いジャズバンド
この世に行き交い空港大夕焼
くらくらと時差にねじれて夏落葉
米国につながるいのち金銀花
PCR検査大陸残暑かな
朝霧の光を踏んでしんがりに
アメリンカンジョーク遅れて笑い水の秋
栗色の髪やわらかく泉汲む
狂おしく暮れる大空百日紅
【山崎名誉主宰の選】
<火炎集>響焔2022年7月号より
春宵のページめくれば地獄絵図 石倉 夏生
しずけさに深さのありてさくら満つ 栗原 節子
さくらさくら清らかなる白骨に 森村 文子
花筏ごつんごつんと自由なり 加藤千恵子
ひとりずつ離れて座る朧かな 中村 克子
夜に散るなりさくらいろの桜 松村 五月
さくら見て塔へのぼってふと不安 波多野真代
大空を白い夢ゆく春の午後 楡井 正隆
きいろからはじまる春よとんびの輪 川口 史江
引力を遠くはなれて春の月 石谷かずよ
【米田主宰の選】
<火炎集>響焔2022年7月号より
切株の年輪の数戦災忌 和田 浩一
春眠の奥へ躰を置いて来し 石倉 夏生
しずけさに深さのありてさくら満つ 栗原 節子
ひとりずつ離れて座る朧かな 中村 克子
夜に散るなりさくらいろの桜 松村 五月
夕桜一軒残る餅菓子屋 岩佐 久
病む人にともす一灯初桜 大見 充子
たましいの解き放たれてさくら散る 波多野真代
地球儀の地球でこぼこ花曇 石井 昭子
引力を遠くはなれて春の月 石谷かずよ
【加藤千恵子選】
<白灯対談より>
横浜の大きな空をほととぎす 金子 良子
情動の解き放たれて月下美人 池宮 照子
梅雨寒や隅に落着く珈琲店 横田恵美子
青い花一気に咲いて夏来たる 北尾 節子
白濁の出て湯に浸かり明易し 鹿兒嶋俊之
路地裏の風鈴ついに風になる 牧野 良子
壺に挿すひまわりあふれ笑顔の黄 長谷川レイ子
山開き仲間と集う山の小屋 山田 一郎
【白灯対談の一部】
横浜の大きな空をほととぎす 金子 良子
鳴き方は「天辺かけたか」とか「特許許可局」と聞こえるほととぎす。この小さな渡り鳥は口腔が赤く、「鳴いて血を吐く」と云われた。
杉田久女の<谺して山ほととぎすほしいまま>は有名。
以前響焰の新樹会で鎌倉の新緑を歩いた時、この句の凄さをひしひしと感じた。
さて、金子さんの〝ほととぎす〟を詠った掲句も、スケールの大きい明るい作品で、久女に負けていない。
因みに作者は横浜の人であり、その〝大きな空〟のもとで暮らしている。例えば「東京の大きな空」では詩に遠いものになってしまう。〝ほととぎす〟も絶妙で動かない佳句。
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