響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2022年10月号より

響焰2022年10月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202210

無  聊       山崎 聰

明日が見えるはずもなくももさくら
これからを思えばさびし花のあと
さくら散り鳥啼き海山暮れはじむ
青葉木菟ひとこえ鳴いて無聊なり
海山のあわいに光みどりの日
東京は朝から晴れて梅雨の入り
青葉騒ひそひそといる彼彼女
五月の雨郵便局を過ぎてすこし
ふたつみつ青梅ころげああ無情
彼彼女そしてわれらに夏来たる

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202210

栗色の髪       米田 規子

夕蟬の声のさざなみ風生まる
ゆく夏の木陰に集いジャズバンド
この世に行き交い空港大夕焼
くらくらと時差にねじれて夏落葉
米国につながるいのち金銀花
PCR検査大陸残暑かな
朝霧の光を踏んでしんがりに
アメリンカンジョーク遅れて笑い水の秋
栗色の髪やわらかく泉汲む
狂おしく暮れる大空百日紅

 

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2022年7月号より

春宵のページめくれば地獄絵図      石倉 夏生
しずけさに深さのありてさくら満つ    栗原 節子
さくらさくら清らかなる白骨に      森村 文子
花筏ごつんごつんと自由なり       加藤千恵子
ひとりずつ離れて座る朧かな       中村 克子
夜に散るなりさくらいろの桜       松村 五月
さくら見て塔へのぼってふと不安     波多野真代
大空を白い夢ゆく春の午後        楡井 正隆
きいろからはじまる春よとんびの輪    川口 史江
引力を遠くはなれて春の月        石谷かずよ

 

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2022年7月号より

切株の年輪の数戦災忌          和田 浩一
春眠の奥へ躰を置いて来し        石倉 夏生
しずけさに深さのありてさくら満つ    栗原 節子
ひとりずつ離れて座る朧かな       中村 克子
夜に散るなりさくらいろの桜       松村 五月
夕桜一軒残る餅菓子屋          岩佐  久
病む人にともす一灯初桜         大見 充子
たましいの解き放たれてさくら散る    波多野真代
地球儀の地球でこぼこ花曇        石井 昭子
引力を遠くはなれて春の月        石谷かずよ

 

【加藤千恵子選】

<白灯対談より>

横浜の大きな空をほととぎす       金子 良子
情動の解き放たれて月下美人       池宮 照子
梅雨寒や隅に落着く珈琲店        横田恵美子
青い花一気に咲いて夏来たる       北尾 節子
白濁の出て湯に浸かり明易し       鹿兒嶋俊之
路地裏の風鈴ついに風になる       牧野 良子
壺に挿すひまわりあふれ笑顔の黄     長谷川レイ子
山開き仲間と集う山の小屋        山田 一郎

【白灯対談の一部】

 横浜の大きな空をほととぎす       金子 良子
 鳴き方は「天辺かけたか」とか「特許許可局」と聞こえるほととぎす。この小さな渡り鳥は口腔が赤く、「鳴いて血を吐く」と云われた。
 杉田久女の<谺して山ほととぎすほしいまま>は有名。
 以前響焰の新樹会で鎌倉の新緑を歩いた時、この句の凄さをひしひしと感じた。
 さて、金子さんの〝ほととぎす〟を詠った掲句も、スケールの大きい明るい作品で、久女に負けていない。
 因みに作者は横浜の人であり、その〝大きな空〟のもとで暮らしている。例えば「東京の大きな空」では詩に遠いものになってしまう。〝ほととぎす〟も絶妙で動かない佳句。

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