響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2022年11月号より

響焰2022年11月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202211

とことこと       山崎 聰

すみれたんぽぽ房総のはずれに居り
海山になにもなければさくら見て
みんな仲間たんぽぽ綿毛こどもたち
牛を曳き葉ざくらの道とことこと
落柿に赤いところも村はずれ
薔薇香り関東平野雨のなか
境内は蟬鳴くばかり日暮れどき
崖下をやわらかい風七月来
坂道のもうすこし先墓参り
落葉みち杖でさぐりてふと無頼

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202211

茨 の 実       米田 規子

誰かれのこと青柿おもくなる
飲み忘れたる薬のゆくえ天の川
茨の実ひと山越えてはじめから
土砂降りの音フォルテシモ林檎噛む
FAXのはらり一枚虫の闇
約束をのばしてもらい秋夕焼
台風の進路にいるらし塩むすび
その先を考えている竹の春
秋しぐれチャーハン跳ねる中華鍋
ハキハキと答える子ども豊の秋

 

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2022年8月号より

みどり立つ雨の水輪の飛鳥山       栗原 節子
五月青空えんぴつの転がって       森村 文子
憲法記念日ぶつかってくる黒い影     中村 克子
曖昧に人集まって春闌ける        松村 五月
ひとりずつ空の真ん中五月晴       大見 充子
ざわざわと勝鬨橋の白い靴        蓮尾 碩才
園児のこえ先生の声麦の秋        小川トシ子
街の灯のひとつずつ消え遅き春      相良茉沙代
入口のふくらんでいる春の街       楡井 正隆
下町の夏の太陽小学校          廣川やよい

 

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2022年8月号より

廃校のそれぞれの窓夕桜         和田 浩一
五月青空えんぴつの転がって       森村 文子
葉桜やまだ何者でもない少年       松村 五月
ひとりずつ空の真ん中五月晴       大見 充子
手のひらの百円軽く春の昼        蓮尾 碩才
てっぺんは夏雲になる観覧車       北島 洋子
更衣風を待たせていたりけり       秋山ひろ子
入口のふくらんでいる春の街       楡井 正隆
花は葉にやがて日暮れを呼ぶように    大森 麗子
新樹さざめき遠景を見失う        小林多恵子

 

【米田規子選】

<白灯対談より>

壁に翅広げいるもの秋澄めり       池宮 照子
雲とんで山の彼方へ墓洗う        北尾 節子
ばらばらと愛が崩れてダリアの夜     牧野 良子
大夕立壁の魚が泳ぎ出す         横田恵美子
神鳴や線香灯すおばあさん        鹿兒嶋俊之
トマトごろごろ新聞の休刊日       金子 良子
明易し欄間に動く松の影         原田 峯子
橋数多通るセーヌの舟遊び        増澤由紀子

【白灯対談の一部】

 壁に翅広げいるもの秋澄めり       池宮 照子
 年々、夏の暑さが厳しいと感じるようになった。それは地球温暖化のせいだけでなく、加齢による体力不足も大いに関係がある。そんな夏の暑さをなんとか凌ぎ、ある日ふっと秋が訪れる。これまでと明らかに違う風に心と体が安らぐ。そして秋の空、水、空気などがどんどん透明感を増してゆく。
 掲句は作者なりの感じ方、詠み方で存分に〝秋澄めり〟を表現していると思う。まず〝壁に翅広げいるもの〟と見た瞬間を捉えた措辞は素晴らしい。読み手は〝翅〟の薄さやほんの少しの震え、あるいは壁と同化しそうな翅の広がり方など多くのことを想像できるのだ。そして、その巧みな措辞のあと十分な間合いがあって、〝秋澄めり〟と着地した。前半はとても緻密なフレーズ、結句は〝秋〟そのものを全身で享受しながら、どこまでも澄みゆく〝秋〟を読み手に伝えることができた。
 同時発表の<盆の月宗朝体の紹介状>にも注目した。何も云ってないが、〝盆の月〟が効いていて格調高い一句。

« »

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*