【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202212
秋から冬へ 山崎 聰
雨降りつづき著莪の花著莪の花
忘却の彼方にありて夏の雲
山暮れてそろそろ河鹿鳴くころか
敗戦日月下うかうか生き延びて
大声で呼ばれふり向く蛍の夜
もうすこしがんばってみよう夏満月
真暗がり誰も知らない蛇の穴
町に出てすこし歩きぬ月の夜
めずらしきことと思いぬ屋根に雪
新宿も銀座もさむき秋立つ日
【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202212
小さなハート 米田 規子
風を描きカンバス一面花野原
平凡ないちにち林檎の紅きいろ
まだ柿の色付き足りぬ夕日かな
すこやかに術後一年秋桜
ぼんやりと未来が見えて吊し柿
泡立草なんだかんだと云ってくる
ベルギーチョコの小さなハート秋灯
こわごわと通草の冷えを掌に
ビルの灯のビルをあふれて暮の秋
おだやかなきょうを賜り紅葉狩
【山崎名誉主宰の選】
<火炎集>響焔2022年9月号より
母家より少し離れて桐の花 栗原 節子
砂山の向こう砂山夏の海 森村 文子
自販機の中の混沌いなびかり 加藤千恵子
人の死に蝶のあつまる夕まぐれ 中村 克子
薔薇散ったあとのうやむやそれを見る 松村 五月
森騒ぐ風がみどりとなるころか 大見 充子
青葉騒とおくで赤子泣いている 小川トシ子
白南風や一丁目一番地の空 山口美恵子
水無月のうす昏がりの少年よ 鈴木 瑩子
空っぽの夕立あとの裏通り 小林多恵子
【米田主宰の選】
<火炎集>響焔2022年9月号より
沖縄忌町に夕餉の匂い満ち 和田 浩一
我先にそよぎだす青ねこじゃらし 石倉 夏生
青空は心底さみし花いばら 栗原 節子
太初より言葉はつばさ麦の秋 加藤千恵子
明け方の正しい位置に蟇 松村 五月
過ぎゆくは日傘の男昌平坂 河村 芳子
みんな居て一人足りない梅雨の月 大見 充子
寅はなくさくらも八十路夏は来ぬ 蓮尾 碩才
青田風何もないけど卵焼 山口美恵子
幸せはあなたのうしろかたつむり 加賀谷秀男
【米田規子選】
<白灯対談より>
窓ぎわの折鶴の影良夜かな 横田恵美子
裏返して愁思をはたく二度三度 池宮 照子
風の名にそれぞれ母国秋隣 齋藤 重明
洗濯物ふわりと落ちて大夕焼 金子 良子
秋の蟬古刹の階に転がれる 鹿兒嶋俊之
名月や庭どなりから下駄の音 長谷川レイ子
音もなくただ風が吹く今朝の秋 北尾 節子
無花果を捥いで生家の空の色 牧野 良子
【白灯対談の一部】
窓ぎわの折鶴の影良夜かな 横田恵美子
令和4年9月10日の満月は本当に素晴らしかった。月光が降り注いで辺りは白々と明るく、夜空に輝くまん丸なその月は心が洗われるほど美しかった。
掲句は下五〝良夜かな〟と静かに詠嘆をしている。作者も仲秋の名月の夜を心ゆくまで楽しんだようだ。
この句は〝折鶴の影〟と〝良夜〟の取り合わせで成り立っている。光と影の対比とも云えるが、そこは作者の工夫のあとが見られ、「月光」とか「満月」などでなく〝良夜〟を選んだことが成功していると思う。<先を急ぐバイクの僧侶秋日和> この句にも注目。日常の一こまをひょいと掴んで楽しい俳句だ。〝バイクの僧侶〟に現代の社会が反映されている。
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