【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202301
無為の日々 山崎 聰
さくらたんぽぽ九十一歳男子なり
ほととぎす里のちちはは如何におわす
古本に囲まれ暮らす夏の日々
終戦の日山鳩がしきりに鳴いて
大空をちぎれ雲とび秋立つ日
山鳩が朝から鳴いてきょう母の日
満月のあとの数日村の地蔵
秋の虫鳴きはじめさて父母如何に
屈託の行ったり来たりして夜長
ふたつみつ山栗こぼれ無為の日々
【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202301
少し青 米田 規子
横浜やポンポンダリアの晴れの空
小春日のマスク外せぬ日本人
ラフランス熟して詩(うた)になるところ
鴉啼き立冬の空少し青
急坂やぎんなん降って風吹いて
夕空にうっすらと富士ふゆはじめ
小豆煮る遊びごころをかきまぜて
核心のわからずじまい冬林檎
熊手を高くエスカレーター下りてくる
冬の星行きつくところ独りなり
【山崎名誉主宰の選】
<火炎集>響焔2022年10月号より
ひまわりの列しんかんとして真昼 栗原 節子
海の駅うしろすがたの麦わら帽 森村 文子
手に残る鉄鎖の匂い日雷 松村 五月
是非もなし八月の空ほろ苦く 大見 充子
廃線の行き着くところ大西日 北島 洋子
とりとめのない日々蟬が鳴き出して 秋山ひろ子
笹舟のおぼつかなきも風のせて 鈴木 瑩子
やわらかな午後の風音おおでまり 楡井 正隆
純粋のあつまっている青ぶどう 小林多恵子
見えぬもの見えぬままなり八月来 吉本のぶこ
【米田主宰の選】
<火炎集>響焔2022年10月号より
一色の思想ひろがり小下闇 石倉 夏生
夏青空歩いて休んでまだ遠い 森村 文子
八月やモーツァルトを人類に 松村 五月
朝曇りどこぞを病みて眉を引く 河村 芳子
是非もなし八月の空ほろ苦く 大見 充子
ぴかぴかの青空かたつむりの休日 秋山ひろ子
遠花火海の声いま父の声 河津 智子
たちまちに海の暮れゆく半夏生 楡井 正隆
日の盛水音軽く山の寺 廣川やよい
つづれさせあれは還らぬものの声 吉本のぶこ
【米田規子選】
<白灯対談より>
敬老日クイズ一位の鯨缶 菊地 久子
満月の微かに揺らぐ水面かな 酒井 介山
改札を過ぎて一歩の月今宵 牧野 良子
冬めくや猫は尻尾返事する 金子 良子
地下街のどこから出ても鰯雲 横田恵美子
陶然とタクトのままに猫じゃらし 池宮 照子
親子とて山は極秘の茸狩 梅田 弘祠
朝練のスマッシュ強く百舌の声 長谷川レイ子
【白灯対談の一部】
敬老日クイズ一位の鯨缶 菊地 久子
令和4年9月10日の満月は本当に素晴らしかった。月光が降り注いで辺りは白々と明るく、夜空に輝くまん丸なその月は心が洗われるほど美しかった。
作者の菊地久子さんとは、ずっと以前お互いに若かった頃、響焰の白秋会など大きな吟行会でお会いしたことがあり、とてもお元気で楽しい方だったと記憶している。それ以来お会いしていないが、地元でしっかりと俳句の勉強をされてご活躍の様子なので嬉しく思っている。
掲句は単刀直入にズバリと〝敬老日〟を詠んだところが面白い。動詞は使っていないので説明など無く、ポンポンポンと勢いが良い。取り分け結句の〝鯨缶〟は秀抜だ。意外な一等賞に作者も驚いてこの句が生まれたのかもしれない。 同時発表の<たたかいの匂いのひとつ蒸し藷>にも共鳴。コロナウイルスとの闘い、ロシアとウクライナの戦争など不穏な世界情勢を作者の目線で描いた佳句と思う。
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