【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202402
ともかくも 山崎 聰
もうすこし生きていようよ秋の虫
ともかくもきょうの仕事を秋の長雨
夜明けにて鵲遠く鳴くを聞く
東京は名残の空の明るさに
一抹の不安東京に雪が降り
どこをどう曲がっても同じ冬の夜
東京さびし越後は雪の日曜日
鬼が住む満開さくらの山のむこう
信州も東京もさくら吹雪の中
もうすこしたったら云おう花のこと
【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202402
冬 青 空 米田 規子
いっせいに紅葉が散って今朝のゆめ
初しぐれ鋭角に鳥横切って
人と人のあいだを詰める十二月
パトリック来て独逸語交じる冬の暮
止めようのなき時の速さを鵙高音
自由とはてくてくてくと冬青空
冬萌や野球少年輪になって
とつぜんの膝の不機嫌年つまる
薬膳カレー胃の腑にしみて冬景色
短日や行きも帰りも向かい風
【山崎名誉主宰の選】
<火炎集>響焔2023年11月号より
さびさびと八月がくる年を取る 石倉 夏生
しみじみと手のひらを見る晩夏かな 栗原 節子
たましいの浮遊している熱帯夜 中村 克子
明るくも暗くもなくて花氷 松村 五月
いなびかり恐竜の絵の動き出す 戸田富美子
言問を渡りきるとき虹二重 鈴木 瑩子
ひらひらと一円切手夜の秋 小林多恵子
おかめの笹丸く刈られて秋近し 廣川やよい
二重虹追えばだんだん遠くなり 加賀谷秀男
ありありと光の中の青蜜柑 北尾 節子
【米田主宰の選】
<火炎集>響焔2023年11月号より
晩学の眼鏡を替えて夜の風鈴 和田 浩一
さびさびと八月がくる年を取る 石倉 夏生
さりさりと赤い薬包九月来る 加藤千恵子
ぶどう色に暮れ晩夏のひとりなり 松村 五月
レントゲンに写ってしまい夏の恋 北島 洋子
遠花火にんげんらしく声を出す 小川トシ子
さるすべり真昼はいつもうわの空 秋山ひろ子
はろばろと雲の行方も夏木立 山口美恵子
真ん中に黒猫のいる夏座敷 小林多恵子
一日歩き二日見てきし花みょうが 吉本のぶこ
【米田規子選】
<白灯対談より>
秋桜赤銅色のガードマン 原田 峯子
秋深む小江戸の街もメガネ屋も 金子 良子
侘助の隣のとなり空家なり 牧野 良子
翁忌や思い馳せたる芒原 増澤由紀子
少年の口笛高く冬木立 横田恵美子
秋深しどこにもいない人の声 中野 朱夏
文化の日コーンスープのやさしい色 原 啓子
これ以上やせてはならぬ冬桜 櫻田 弘美
【白灯対談の一部】
秋桜赤銅色のガードマン 原田 峯子
毎この句で特に惹かれたのは〝秋桜〟と〝赤銅色のガードマン〟との取り合わせだ。街で見かけるガードマンは、確かに〝赤銅色〟かもしれない。猛暑の時、また反対に厳しい寒さの中でもその任務を果たしている。大変過酷な仕事だといつも思う。
掲句は〝秋桜〟の季節なので、比較的快適な気候の時期に出会った〝ガードマン〟と云える。秋の澄んだ空の下でさえ
も〝赤銅色〟が染みついていて、その労働の厳しさを窺い知ることができるのだ。〝赤銅色〟は作者が対象に出会った時に感じた印象だと思う。
〝赤銅色〟と云う強烈な印象としなやかで明るい〝秋桜〟を上五に置いた意外性で、この句は事実以上のものを表現することができた。無駄なことばもなく、大変良い作品だ。
コメントを残す