【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→shusai_haiku_201611
こつんころん 山崎 聰
原罪か原風景か旱星
大花野こつんころんと風小僧
釈尊の御眼にちからこぼれ萩
敬老の日の母ヨハネ書は知らず
月の雨国のおわりを見るような
それからのおとこのくらし赤とんぼ
テロのこと加齢のこともいぼむしり
もはや遠く月山は秋の長雨
彳亍や天高く詩人蘇る
蝗大群渤海国を見てきしか
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2016年8月号より
蒲公英の絮凱旋門を目指す 栗原 節子
だらだらと虚構の春を曲りけり 森村 文子
妖艶の刻あり壺に花あやめ 山口 彩子
泰山木咲けり千年の途上 廣谷 幸子
じゃがいもの花紛れもなく日常 米田 規子
嚢中に文庫一冊昭和の日 岩佐 久
だれにともなくおぼろ夜の遠いベンチ 青木 秀夫
山里にたっぷりと水昭和の日 小林 伸子
下総のはずれにしゃがみ草を刈る 愛甲 知子
黒猫婆裟羅金柑の花咲いて 大見 充子
<白灯対談より>
日暮まで本能のままいて跣 蓮尾 碩才
初めての山の日はるか古里よ 多田せり奈
遠くから見てほしいのとさるすべり 笹尾 京子
暑中お見舞東京に空ありて 松村 五月
夏の星息絶えている水の底 佐藤由里枝
赤べこのそうかそうかと盆の月 志鎌 史
吊橋の頼るものなく霧の中 塩野 薫
懸命ににいにい蝉と太陽と 相田 勝子
八月の喪服の日々をさびしめる 土田美穂子
対岸に父の背ありて遠花火 酒井眞知子
ほほえみのなかのかなしみ黒ぶどう 中野 充子
蝉声を斜めに過り人力車 川口 史江
大きめの靴であるいて夏の朝 笹本 陽子
黒髪をきりりと束ね冷奴 森田 成子
【山崎主宰の編集後記】
繰り返し云うが、俳句の新しさとは、材料や言葉の新しさではなく、あくまでも、拵えの新しさである。”ものの見方の新しさ”と云ってもよい。徒に難しい言葉を派手に並べて珍奇な内容で人目を惹く、といった姿勢からは、ついに本物の詩は生まれない。
”普通のことを、普通の言葉で、普通に云う”は常に俳句の鉄則である。”ことばではなくてこころ”つまりはそういうことであろう。 (Y)
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