響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2018年12月号より

響焰2018年12月号より


【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201812


寧楽    山崎 聰


王朝の寧楽(なら)をおもえばほととぎす
炎日の柩を置くに水の下
その一本を赤い花アマリリス
遠い日はとおくなんばんぎせるかな
ゆっくりと下りて秋に追いつきぬ
諧謔のさいごのさいご秋の風
すこしだけやさしくなって秋の夕暮
あと一歩オリオン見えるところまで
秋の野赤く大きい子小さい子
十月の俺と尻尾と神楽坂

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2018年9月号より

はつなつや墨の滲みの吉野紙       栗原 節子
月下美人もうひとつの闇ひらく      森村 文子
六月のいちにち長し象の皺        米田 規子
暗澹の方へ曲がりて蝸牛         中村 克子
たれかれがいる逃水の向こうがわ     西  博子
まなこさまよい六月のみずたまり     青木 秀夫
沸点にとどく泰山木の花         愛甲 知子
戦争と平和かたつむり生きている     高橋登仕子
片隅に風のあつまる余り苗        土屋 光子
そら豆の不思議な顔の不愛想       石井 昭子

<白灯対談より>

何もないいつもの暮し良夜かな      廣川やよい
何はともあれ窓をふく野分あと      中野 充子
真実のいろ深くして白薔薇        大森 麗子
ゆったりと八月のみんなの地球      森田 成子
覚悟をすれば気楽なり二十三夜      波多野真代
主なき書斎にとどき稲光         川口 史江
十三夜かすかにまるい辞書の肩      小林多恵子
一粒の狂気大皿のマスカット       北川 コト
花ダチュラよみがえりよびもどすころ   大竹 妙子
青蜜柑やさしくされて寂しかり      相田 勝子
遠くから音が運ばれ運動会        江口 ユキ
秋夕焼故郷のいま山頭火         土田美穂子
秋初め天使の羽根のように雲       小澤 裕子
冬瓜の途方に暮れたるすがたかな     田口 順子
オペラ座の秋を思いてねむりけり     笹本 陽子
峡も秋小母さんと犬振り返る       加賀谷秀男

 

【山崎主宰の編集後記】

 俳句は、見たもの、つまり眼前の事実をどう書くかではなく、眼前の事実からどう離れるか、なのではないか。

 古来、写生の名句として人口に膾炙している俳句も、一見眼前の事実を書いているようで、実は事実の奥にある真実を書いているから名句なのだ。

 事実を確かめたら、あとはその事実から離れる、それができなければ本物の俳句は書けまい。虚実皮膜とはそういうことであろう。       (山崎)

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