響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2018年6月号より

響焰2018年6月号より


【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201806


春のいろいろ    山崎 聰


多喜二忌とたしか同じ日青鮫忌
これまでもこれからさきも春のいろいろ
東京の花の下にて鬼ごっこ
何色と訊かれて春のいろという
何饅頭の薄皮のよう木の芽雨
人去って花残るある雨の午後
しばらくは春の名残リのひとつ星
花おわるあとは自由な風吹いて
たましいを光らせあるく穀雨の夜
われいまここにしかと在り蕨餅

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2018年3月号より

寒鯉の夢に緋鯉の現るる         石倉 夏生
走り続けて荒星の輝きに         米田 規子
淋しさが笑っておりぬ花八つ手      紀の﨑 茜
青山通り下る二の酉三の酉        西  博子
一純粋こつと躓く十二月         河津 智子
出藍の誉れのような初御空        内田  厚
村一つ昭和に染めて柿たわわ       山口 典子
ふかぶかと御辞儀しており十二月     楡井 正隆
初寝覚アンモナイトの渦の中       大見 充子
戦争の方を見ている冬桜         松村 五月

<白灯対談より>

ほどほどの田舎のくらし花ミモザ     廣川やよい
千本の土筆が目指す青い空        森田 成子
寒い風暖かい風雪柳           江口 ユキ
たんぽぽの綿毛と帰る日曜日       中野 充子
水飴は初恋の色はるのいろ        波多野真代
ぽつねんと父が来ており春の星      大竹 妙子
早潮の葉山の浜の若布籠         小林多恵子
太陽に近き色なり花山茱萸        相田 勝子
朝桜独り占めして空の青         笹本 陽子
地球儀の裏のくらやみ亀鳴けり      塩野  薫
暮れなずむ谷中銀座のさくら餅      大森 麗子
道問えばひとみなやさしあたたかし    川口 史江
長い貨車にふと戦争を春の風       原田 峯子
三月はうすべにいろに暮れてゆく     小澤 裕子

 

 

【山崎主宰の編集後記】

 二分法は単純でわかり易いから、なんとなく説得力がある。敵か味方か、保守か革新か、白か黒かなど。

 俳句の場合も伝統と前衛、具象と抽象、虚と実などのように二分法はそれなりの説得力を持つ。しかし、俳句のような文芸では、案外二つの間のグレーゾーンに大きな意味と本質がある場合が多い。事実がきっかけだったとしても、俳句として完成させるためには想像力の働きが大きく関わる、といった具合に

 俳句に限らず、およそ文芸に二分法は馴染まないと思うが、どうであろう。       (Y)

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