響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2020年5月号より

響焰2020年5月号より


【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202005


すでにして    山崎 聰


残り柿命終のことなどもふと
山に雪降り野に雪降り彼と彼
いちにち迅くいちねん長し垂(しず)り雪
雪消えるころみちのくはほのあかく
春の風なまぐさきかたちして二人
すでにしてバビロンははるかなる春
雨が止み公園の仔猫のゆくえ
春眠はタクラマカンの砂と塩
とつぜんに子をとろ子とろ遅日かな
再会のそこここに空シネラリア

 


【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202005


春のパセリ     米田 規子


そくそくと二足のわらじ薄氷
鳥たちの空の領分冴返る
晴天や屈みて春のパセリ摘み
三日籠りてフリージアの朝の息吹
木々芽吹き平常心のどこへやら
春の雪もの書く姿勢くずさずに
炒り玉子ほろほろあまく朧の夜
えんぴつの倒れた先の春景色
いつまでの全力疾走ひこばゆる
オムレツにケチャップするりと三月来

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2020年2月号より

冬帽子いっぽんみちは遠い道       栗原 節子
つわぶき咲いてこんなにも死者の数    森村 文子
思い出すたび新しい雪降れり       渡辺  澄
したたかに灯る西口十二月        加藤千恵子
にびいろの月を想えば平家琵琶      大見 充子
この秋を歩けばボーヴォワールめき    松村 五月
十一月呆気なく頂上に出る        山口美恵子
雨上がりすめらみことに虹の端      蓮尾 碩才
小粒柿泣いて笑って日が暮れて      中野 充子
ひかりから光へ跳んで稲雀        小林多恵子

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2020年2月号より

むかしむかし井戸と裏木戸冬の虹     森村 文子
やや遠き日常黄落のポプラ        加藤千恵子
人声の恋しき日なり鳥渡る        中村 克子
冬の日のいろをいちずに猫のひげ     青木 秀夫
朝な夕なに晩秋のうらおもて       あざみ 精
烏瓜すでにこの世のことでなく      松村 五月
秋高しほうほうほろと塞翁が馬      小林 伸子
十一月呆気なく頂上に出る        山口美恵子
青空のむこうからきて鉦叩        楡井 正隆
晩学の明るいひと日とろろ汁       廣川やよい

 

<白灯対談より>

立春の言問橋の風のいろ         大竹 妙子
日脚伸ぶ品川駅の渦の中         北川 コト
何度でも夢を飛ばそうシャボン玉     小澤 裕子
丸メガネとハイネの詩集水の春      小林 基子
待春やおはじきぬりえわらべ歌      相田 勝子
新宿の夕闇を連れ焼芋屋         金子 良子
水仙の吐息の仄か海しずか        森田 茂子
寒風になお抗いて老夫婦         加賀谷秀男
冬銀河みえない手と手にぎりあう     川口 史江
のどけしや絵手紙の文字飛びこんで    廣川やよい
衣擦れの音は佐保姫それとも風      小澤 什一
約束の失せたる小指春の雪        吉本のぶこ
良きことも金柑の黄の暮れのこり     原田 峯子
暮の春オルガンを弾く昭和の子      佐藤千枝子

 

【米田主宰の編集後記】

 新型コロナウィルスが地球規模で猛威をふるっている。その影響で今まで当り前に開いていた句会があっけなく消え、この先の不安に悶々とするばかりだ。しかし、こんな時でも響焰誌は毎月発行しており、編集や発送の方々の支えを強く感じている。また、それと同時に毎月皆様から届く投句は、私に元気と勇気を与えてくれる。なんとかこの難局を乗り越えて、大会や句会で皆様とお会いできることを楽しみにしている。        (米田規子)

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