【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201805
おぼろ 山崎 聰
みな黙るたましい雪に還るとき
喜八亡く兜太また逝き二月の田
見えるものだけを見つめて朧の夜
なにはともあれ雪国の春を見に
早春というやや甘酸っぱい野山
ひとつずつ離れてゆきぬ朧影
加齢して春宵一刻蒸羊羹
月の裏側見えてくるはず北開く
うすべにともちがうある春のあけぼの
たそがれのひとりは春のまっただなか
【山崎主宰の選】
<火炎集>響焔2018年2月号より
十六夜の窓辺に吊す喪服なり 栗原 節子
菊かおる菊にかくれて菊人形 森村 文子
落葉掃く玲瓏なりし昨日今日 山口 彩子
十一月はゆるやかなる上り坂 米田 規子
納得のかたちに戦ぐ枯芒 中村 克子
無位無官なれど見送る神の旅 伊達 甲女
漆黒も紅も枯れ人に色 君塚 惠子
天平の光をあつめ実むらさき 山口 典子
三日月にひっかかっているピカソ 松村 五月
戻りたい戻れない真夜の寒雷 波多野真代
<白灯対談より>
雪の轍たどってゆけば父の国 中野 充子
喧噪は春風浅草一丁目 大竹 妙子
赤ん坊もお婆さんもいて落葉 小林多恵子
大雪嶺さらにかがやき山の声 森田 成子
いにしえの舟唄なのか冬柳 波多野真代
野水仙ほつりほつりと村昏れて 土田美穂子
梅の香や呼ばれたようで夜の底 廣川やよい
憂国や冬の月蝕赤ければ 相田 勝子
雪蹴って空缶蹴って昭和かな 塩野 薫
雪が降るふるさとすこし近づいて 江口 ユキ
寒卵抱きたるここち玉三郎 大森 麗子
みな老いて叱られており花の昼 笹本 陽子
雪が降り昭和の香り消えてゆく 田口 順子
ひと日会いひと日を減らし花いちご 川口 史江
【山崎主宰の編集後記】
”考え抜いてふんわり表現する”とは某グラフィックデザイナーの言。これは俳句にも当てはまる。
いろいろ材料や言葉を思い浮かべてさんざん考えた末、俳句として出すときは、その中のごく一部、ほんのすこしだけをさりげなく云う。云わなかった思いや言葉は、必ず云ったことの行間に滲んでいるものだと思う。
たくさん考えてすこしだけ云う。俳句という詩の強さはこのへんにあるのではないか。 (Y)
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