響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2018年9月号より

響焰2018年9月号より


【山崎主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_201809


慟哭    山崎 聰


トマトから生まれてきょうのむすめたち
熟睡のあと夏星の一語一語
東京をはなれてからの祭笛
蚰蜒(げじ)蜈蚣(むかで)いろあって日が暮れる
アマリリスその一瞬の顔かたち
慟哭はかの夏の日の雲間から
ためらいてさまよいて炎日の母ら
ともだちのともだちとして夏の星
やさしさに遠くある日の白い滝
ぼんやりといて月の夜のアメフラシ

【山崎主宰の選】

<火炎集>響焔2018年6月号より

みずうみにみずいろのそらみずの春    和田 浩一
雪国のふたり横浜名残雪         米田 規子
桜どき未知数わっと溢れ出て       加藤千恵子
初蝶来て老人がきて白い家        中村 克子
見送られ見送りふいに霞けり       伊達 甲女
花山椒齟齬ありて人なつかしく      西  博子
赤い紙など燃やしいて春彼岸       小川トシ子
花の宴ご先祖様と子々孫々        君塚 惠子
冴返るポストに落す短詩型        大見 充子
目覚めれば雪ゆめのつづきのように    波多野真代

<白灯対談より>

存分にふるさとの風夏の果        大森 麗子
会いにゆく内幸町沙羅が咲き       大竹 妙子
蛇穴を出て多摩川の水明り        中野 充子
小惑星に探す王子とバラと井戸      小林多恵子
梅雨長く二番ホームを鳩歩く       相田 勝子
凌霄や一本道はふる里へ         廣川やよい
偏見はたちまち消えて青野かな      波多野真代
森五月見えぬもの大きく揺れて      森田 成子
梅雨明けて待っていたのは一番星     笹本 陽子
砲台六基こうこうと白い夏        川口 史江
父の日のすこし錆びたる二眼レフ     田口 順子
水音とあとは青空ウェストン祭      金子 良子

【山崎主宰の編集後記】

 世は挙げて合理化、効率化の時代である。速いことは良いこと。役に立たないものは捨てる。もちろん、そのことに異論はない。

 文明と文化は似て非なるもの。効率や合理性、有用性などは、要するに文明の領域に属する

 俳句は違う。効率や合理性とは対極にあるもの。句会ひとつとってみても、清記、選句、披講などは非効率の最たるもの。しかしそんな効率など薬にしたくもない作業の中に、本物の文化が深々と息づいているのだ。       (山崎)

« »

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*