響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2020年10月号より

響焰2020年10月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202010


八月    山崎 聰


亀あるき時の日のあと太宰の忌
梅雨の闇俺がおのれを見ておりぬ
七夕のやや湿っぽい朝の景
水母浮く何も見えなくなったあとに
山吹がひっそり咲いて夢のまた夢
八月やいのちありせば諾いて
夏の雲きのうより濃く東京へ
神ほとけおおかたは野に八月は
ふつふつと時間うごめく熱帯夜
炎昼や奈落が見えるはずもなく

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202010

天の川     米田 規子

あたまのなかこんがらがって日雷
仙人掌の花会えるのはずっと先
詩の見えぬ日や熱風にあえぐ木々
晩夏光マス目を埋めて空を見て
みな同世代炎天の橋わたる
幻想曲ピアノは月光に濡れて
八月十五日ざぶざぶと顔洗う
ピカーンと晴れて西瓜を真っ二つ
百日紅きょうのいのちを今日つかう
七人の詩人が集い天の川

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2020年7月号より

一番星の下で眠ってつくしんぼ      森村 文子
古語辞典開く一瞬亀鳴けり        中村 克子
さくら葉桜それからの失語症       西  博子
花吹雪耳を澄ませば母校なり       大見 充子
なつかしき雨を見ており花筏       高野 力一
けんめいに地球は青く春日傘       小川トシ子
明易しかさりこそりと日曜日       河津 智子
桜餅・草餅あおぞらがさみし       秋山ひろ子
階段のいちばん下の春の月        鈴木 瑩子
飛花落花ただそれだけの日曜日      森田 茂子

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2020年7月号より

言霊のふぶく薄墨桜かな         石倉 夏生
十二時におなかが空いて春休み      森村 文子
破れ傘家に隠りて未完の詩        渡辺  澄
高階や転がってくる桜冷え        加藤千恵子
女体抜けきて連翹の風さわぐ       中村 克子
いちにちを何やら速く蜆汁        河村 芳子
山笑うほほえみ返すおとこかな      あざみ 精
餡パンに臍あり四月に憂いあり      松村 五月
韮の花ひとり歩きのひとり言       和田 璋子
あたたかい景色の真ん中雀の子      亀谷千鶴子

<白灯対談より>

カサブランカ泣きたいほどに蒼き夜    小澤 什一
空眩しくて桃の実の熟すころ       北川 コト
耳の裏に少しの湿り半夏生        佐藤千枝子
一切放下ほたるぶくろに籠りいて     小林 基子
絵日記に少年の夢夏の蝶         牧野 良子
額の花しきりなおして日が暮れて     大竹 妙子
見えそうで見えない明日百日紅      相田 勝子
原始から最も遠し冷蔵庫         加賀谷秀男
日の透ける眠りを窓のかたつむり     石谷かずよ
山は秋男時女時のもうあらず       吉本のぶこ
乙女らの太き二の腕草いきれ       北山 和雄
海の日の足跡だけの白い浜        森田 茂子
これからを生きる四万六千日の風     川口 史江
先生のひとこと胸に青葉潮        廣川やよい

【米田主宰の編集後記】

 選句をしながら「惜しいなぁ」と思うことがある。それは不要な情報を一句に盛り込みすぎて、本当に言いたいことが霞んでしまっている時だ。思い切って削るとすっきりして俳句が立ち上がってくる。これは客観的な目で見るから気付くことで、自分の作品を客観視するのは難しいものだ。同様に一句の焦点を絞ることも大切で、作句、推敲には集中力が必要だと思う。かくいう私は、相変わらずピリッとしない駄作を作り続けているのだが。        (米田規子)

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