響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2021年9月号より

響焰2021年9月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202109

まだ早い     山崎 聰

ざわざわと青虫毛虫雨のあと
葉ざくらを青しとおもうきのうきょう
加齢してさくらが散って山残る
ただあるく葉ざくらの闇ただ歩く
梅雨の月いつもの靴でみちのくへ
あっけなく五月がおわり雨と風
鯉のぼりふたり並んで手を振って
卯波夕波ロシアから二人来る
父の日の父いる部屋のくらいところ
梨を食い生前葬はまだ早い

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202109

いっしんふらん       米田 規子

木を伐って青空と雲夏はじめ
胸底に沈むポエムよ青山河
しんかんと卓の主役の梅雨鰯
六月の森の深さをベートーヴェン
おくれ毛のくるんと二歳麦の秋
きのう今日いっしんふらん雲の峰
短夜のははの指輪のキャッツアイ
七夕やおとこは睡りむさぼりて
陽は重くぼってり咲いて黄のカンナ
夕映えのステンドグラス揚羽蝶
八月や波打際をちちに蹤き

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2021年6月号より

騙し絵の裏は真つ暗霾れり        石倉 夏生
ざわめいて弥生三月おわりけり      栗原 節子
遠ざかるもの遠くなり雛祭り       森村 文子
水ぬるむ翳せば濁りあるいのち      山口 彩子
土筆摘むわが身の影を摘むごとく     大見 充子
花冷えや英国式の午後一時        松村 五月
春よ海ほどに淋しいものはない      波多野真代
春北風言葉を紡ぐように川        小川トシ子
水飲んですこし笑って着ぶくれて     河津 智子
春の川ときどき過去の流れきて      北川 コト

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2021年6月号より

とっぷり暮れて本所深川戦災忌      和田 浩一
ざわめいて弥生三月おわりけり      栗原 節子
北窓開く紙と鉛筆音をたて        渡辺  澄
啓蟄や人の匂いにまだ触れず       山口 彩子
東京メトロひっそりと春ショール     加藤千恵子
まどろめば星の音して初桜        大見 充子
春二番むすんでひらいてこの命      鈴木 瑩子
目に見えぬものを包みて春の空      楡井 正隆
水底にしんと日をおく紅椿        中村 直子
晩節と弥生三月花鋏           北川 コト

<白灯対談より>

流蛍や伽藍に琵琶のかわく音       小澤 什一
マチネ跳ね緑雨きらきら交差点      小林 基子
梅を漬け巨船まっかに進み来る      吉本のぶこ
やもりきれいひっそり卵産み終えて    石谷かずよ
泣きそうな空花楓のうす明り       鹿兒嶋俊之
浮雲や麦秋の波遠ざかり         加賀谷秀男
船便の椅子ひとつ待ち夏木立       佐藤千枝子
木漏れ日に柿の花揺れふと加齢      浅野 浩利
ペガサスのやわき着水麦の秋       齋藤 重明
先見えぬ世をまっすぐに蝸牛       横田恵美子
梅雨湿り隣の窓に猫のかお        北山 和雄
ふるさとと同じ夕焼け下校どき      金子 良子
水にある水の明るさ花菖蒲        黒川てる子

【白灯対談の一部】

 流蛍や伽藍に琵琶のかわく音      小澤 什一
 この句は、やや古風な趣きを持ち、非日常的な雰囲気の漂う俳句だ。
 右から左から、美しい光の流線を自在に描きながら飛ぶ蛍。一方で〝伽藍〟から〝琵琶のかわく音〟にも心を奪われる。〝琵琶のかわく音〟と云う把握が〝流蛍〟の動きと相俟ってなにかもの悲しい情感が生まれる。それは寂び寂びとした絵巻物を見る心地である。
 私たちは普段身の回りの空間や時間の一部を切り取って、それを俳句のきっかけとすることが多いのだが、この句は日常を抜け出した環境の中で詩の世界を摑んだ作品と思う。
 同時発表の<讃美歌の届いてアガパンサスの庭>にも共鳴。

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