響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2021年8月号より

響焰2021年8月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202108

一人去る     山崎 聰

朝の霜立ち止まったりしゃがんだり
こころやさしき人と話しぬ名残り雪
雪割草信念はたちまち消えて
春の嵐三人で来て一人去る
映画のように小声で話し春の夜
けものみちらしさくらおわりたるあとは
いうなれば蟄居四月がおわりゆき
叱られている葉ざくらのまんなかで
いちにちはやはりいちにち春の夕焼け
君と僕彼と彼女の青林檎

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202108

旅 遥 か       米田 規子

木を伐って青空と雲夏はじめ
アップダウンいつもの小径海紅豆
小判草夕日の無人直売所
よろこんでくれる人いる桃熟れる
梅酒の琥珀雨音にねむる夜
旅遥かベルガモットの花に虻
つゆの晴れ奥に富山の置き薬
まず外す大きなマスク木下闇
これからも安全な距離冷奴
連弾の息を合わせてアガパンサス

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2021年5月号より

日向ぼこ不要不急の二人なり       石倉 夏生
歳月のうすくらがりに紅椿        栗原 節子
切手よりこぼるる光山笑う        山口 彩子
三寒の三日臥せれば加齢して       西  博子
すかんぽや夕映えは夢の入口       大見 充子
風になるまで漂っている落葉       松村 五月
長居してそろそろ亀の鳴く頃か      相田 勝子
疲れては睡りさめてはもう立春      河津 智子
ものの影ものをはなれて初蝶よ      石井 昭子
ペン先のたとえば春の痛みかな      北川 コト

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2021年5月号より

野火の奥に金閣寺否本能寺        石倉 夏生
大枯野百年を経て誰に会う        森村 文子
臥龍梅今朝は兜太の庭として       山口 彩子
うすらいや夕べかぞえし星の数      加藤千恵子
寒戻る顔のマスクに赤い花        岩佐  久
すかんぽや夕映えは夢の入口       大見 充子
風になるまで漂っている落葉       松村 五月
男体山をどっしり背負い桑芽吹く     和田 璋子
曖昧なものはそのまま冬至の湯      蓮尾 碩才
だまし絵のごとき正月犬もいて      小川トシ子
過ぎし日のおもさ加わり牡丹雪      大森 麗子

<白灯対談より>

八百義の屋号の墨痕つばくらめ      小林 基子
筆おいて誰にも深き緑の夜        石谷かずよ
つまずいて思わぬ暗さ夕若葉       佐藤千枝子
滝壺を出でざる水の青けむり       吉本のぶこ
田水澄み風の生まれる朝かな       浅野 浩利
だれよりも青空仰ぎ朝桜         加賀谷秀男
はつなつや色とりどりに瓶の砂      小澤 什一
柿若葉補助輪とれてとなりの子      原田 峯子
目玉焼の歪な二つ走り梅雨         畑  孝正
三月や護岸に亀の甲羅干し        鹿兒嶋俊之
交差する折れ線グラフ蝶の恋        池宮 照子
夜の薔薇だれも知らない物語       牧野 良子

【白灯対談の一部】

 八百義の屋号の墨痕つばくらめ      小林 基子
 骨組みのしっかりとした俳句で過不足のない一句。
 この句は、何代か続いた大きな八百屋の〝屋号〟に注目して作句したと思われる。〝屋号の墨痕〟と云う措辞に当時の様子が偲ばれる。今はもう古びて文字もかすれ、昔のような賑わいはないのだろう。
 掲句は体言のみで表現された句で無駄がなく、イメージが鮮やかだ。結句〝つばくらめ〟が生き生きとした動きと明るさをもたらしてくれる。また余韻の広がりがある。
 日夜、俳句作りに努力を重ねている作者の佳句と思う。
 同時発表の<野遊びの後ろ姿の暮れなずむ>にも共鳴。

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