【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202108
一人去る 山崎 聰
朝の霜立ち止まったりしゃがんだり
こころやさしき人と話しぬ名残り雪
雪割草信念はたちまち消えて
春の嵐三人で来て一人去る
映画のように小声で話し春の夜
けものみちらしさくらおわりたるあとは
いうなれば蟄居四月がおわりゆき
叱られている葉ざくらのまんなかで
いちにちはやはりいちにち春の夕焼け
君と僕彼と彼女の青林檎
【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202108
旅 遥 か 米田 規子
木を伐って青空と雲夏はじめ
アップダウンいつもの小径海紅豆
小判草夕日の無人直売所
よろこんでくれる人いる桃熟れる
梅酒の琥珀雨音にねむる夜
旅遥かベルガモットの花に虻
つゆの晴れ奥に富山の置き薬
まず外す大きなマスク木下闇
これからも安全な距離冷奴
連弾の息を合わせてアガパンサス
【山崎名誉主宰の選】
<火炎集>響焔2021年5月号より
日向ぼこ不要不急の二人なり 石倉 夏生
歳月のうすくらがりに紅椿 栗原 節子
切手よりこぼるる光山笑う 山口 彩子
三寒の三日臥せれば加齢して 西 博子
すかんぽや夕映えは夢の入口 大見 充子
風になるまで漂っている落葉 松村 五月
長居してそろそろ亀の鳴く頃か 相田 勝子
疲れては睡りさめてはもう立春 河津 智子
ものの影ものをはなれて初蝶よ 石井 昭子
ペン先のたとえば春の痛みかな 北川 コト
【米田主宰の選】
<火炎集>響焔2021年5月号より
野火の奥に金閣寺否本能寺 石倉 夏生
大枯野百年を経て誰に会う 森村 文子
臥龍梅今朝は兜太の庭として 山口 彩子
うすらいや夕べかぞえし星の数 加藤千恵子
寒戻る顔のマスクに赤い花 岩佐 久
すかんぽや夕映えは夢の入口 大見 充子
風になるまで漂っている落葉 松村 五月
男体山をどっしり背負い桑芽吹く 和田 璋子
曖昧なものはそのまま冬至の湯 蓮尾 碩才
だまし絵のごとき正月犬もいて 小川トシ子
過ぎし日のおもさ加わり牡丹雪 大森 麗子
<白灯対談より>
八百義の屋号の墨痕つばくらめ 小林 基子
筆おいて誰にも深き緑の夜 石谷かずよ
つまずいて思わぬ暗さ夕若葉 佐藤千枝子
滝壺を出でざる水の青けむり 吉本のぶこ
田水澄み風の生まれる朝かな 浅野 浩利
だれよりも青空仰ぎ朝桜 加賀谷秀男
はつなつや色とりどりに瓶の砂 小澤 什一
柿若葉補助輪とれてとなりの子 原田 峯子
目玉焼の歪な二つ走り梅雨 畑 孝正
三月や護岸に亀の甲羅干し 鹿兒嶋俊之
交差する折れ線グラフ蝶の恋 池宮 照子
夜の薔薇だれも知らない物語 牧野 良子
【白灯対談の一部】
八百義の屋号の墨痕つばくらめ 小林 基子
骨組みのしっかりとした俳句で過不足のない一句。
この句は、何代か続いた大きな八百屋の〝屋号〟に注目して作句したと思われる。〝屋号の墨痕〟と云う措辞に当時の様子が偲ばれる。今はもう古びて文字もかすれ、昔のような賑わいはないのだろう。
掲句は体言のみで表現された句で無駄がなく、イメージが鮮やかだ。結句〝つばくらめ〟が生き生きとした動きと明るさをもたらしてくれる。また余韻の広がりがある。
日夜、俳句作りに努力を重ねている作者の佳句と思う。
同時発表の<野遊びの後ろ姿の暮れなずむ>にも共鳴。
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