響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2021年7月号より

響焰2021年7月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202107

ひそひそ     山崎 聰

思い出のように雪降り峡住まい
終演のあとのひそひそ雪夜道
どこまでもさびしい時間雪野原
かの山雪か銀座界隈漫歩して
東風あと北風に谷の村
三月さくらこえを出さねばさびしくて
遠くまで男を攫い春北風
尽きることなき三月の峡の水
冬おわり春が来ていつもの畦道
極北の人を思いてやまざくら

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202107

夏  燕       米田 規子

囀りやからだを巡る朝の水
あっさりと予定の消ゆる春の雷
マスキングテープに木馬五月来る
青嵐抱えきれない本の嵩
創造は想像ももいろオキザリス
静寂に揺れるカーテン若葉寒
あのころのははのしあわせ花みかん
籠もり居のふくらむ時を夏燕
ひとりとは青葉若葉の風の音
開催は未定てんとう虫飛んだ

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2021年4月号より

ひらがなの音を踏みしめ落葉道      石倉 夏生
十二月八幡宮の裏へ出て         栗原 節子
冬いちご日々やわらかきたなごころ    加藤千恵子
もろもろの影の蠢く大枯野        中村 克子
寒満月ガレの佳作と思うべし       大見 充子
一月や地図のとおりに川流れ       松村 五月
にんげん凍てて限りなく来るあした    河津 智子
元朝にしろいもの干すしろい人      笹尾 京子
ヴィーナスの腕をさがして去年今年    小林多恵子
東風吹くや理由などなく少年と      北川 コト

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2021年4月号より

体内に迷宮のあり寒夕焼         石倉 夏生
大枯野百年を経て誰に会う        渡辺  澄
開戦日残る枝葉の真紅          山口 彩子
ほどほどの未来を買えり達磨市      中村 克子
2021冬の煙は垂直に         松村 五月
人日のひとしれず散るちいさき花     波多野真代
曖昧なものはそのまま冬至の湯      蓮尾 碩才
にんげん凍てて限りなく来るあした    河津 智子
冬深し遠いところで火が爆ぜて      秋山ひろ子
カフェラテと子規碧梧桐十二月      北川 コト

<白灯対談より>

郭公の声の真水を手に掬う        吉本のぶこ
花楓祖父の形見の葉巻切         小澤 什一
落椿太平洋へ惜しみなく         小林 基子
ラウンジの大窓を消し花吹雪       佐藤千枝子
おおかたは空ひと群れの桜草       石谷かずよ
ゆっくりと別れを惜しみ飛花落花     加賀谷秀男
軸足に力三月のど真ん中         平尾 敦子
沈丁花香り出したるわかれ道       牧野 良子
春落葉どこかにひとつ忘れもの      浅野 浩利
しわ多き漱石の脳花の冷         金子 良子
風そっと髪なでてゆく目借時       横田恵美子
北窓を開きシニアの卓球会        増澤由起子

【白灯対談の一部】

 郭公の声の真水を手に掬う        吉本のぶこ

 俳句を作ろうとする時には、ふだんから周囲にアンテナを張り巡らせ、五感をはたらかせることが大切だと思う。

 掲句〝郭公の声の真水〟と云う把握は、感性を研ぎ澄ませていないと摑めないフレーズで透明感があり、大変美しい。特に〝郭公の声〟を聞いてそれを〝真水〟に転換したところは巧みであり、この句の眼目だ。

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