【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202106
さくらのあと 山崎 聰
雨の夜はとろりとろりと榾明り
冬眠の百日あまり父と母
つと加齢また雪が降りすぐ止んで
灯の先に少年少女春はいつ
きのうきょう藁屋に籠り木の芽雨
もうすこし待って菜の花ひらくまで
圧倒的多数といえば春の星
よもすがらちちよははよと春の雷
なにもせず何も起らず春の地震(ない)
老後か死後かさくらのあとの静寂か
【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202106
リラの冷え 米田 規子
はげましの声とも思い花菜風
考えるためにペン置き朧かな
もったいないような晴天蕗を煮る
マスクして桜いちばんきれいな日
ひと日籠もれば一つ年取り草の餅
漆黒のアボカドやわく菜種梅雨
リラの冷え人を想いて書く手紙
考える悩む竹の子茹でている
ゴールデンウィーク切手の青い鳥
濃厚なチーズケーキと若葉風
【山崎名誉主宰の選】(赤字は山崎先生の添削)
<火炎集>響焔2021年3月号より
すこしずつ毀れる気配年の果 栗原 節子
いっさいは見えぬ重さの初詣 渡辺 澄
どの家も誰かを待ちて冬灯 中村 克子
凍空のどこを切っても異邦人 大見 充子
セロファンに包まれている聖夜かな 松村 五月
記憶の色はより白くシクラメン 波多野真代
無頼派の匂いを余す帰り花 相田 勝子
どの道も二十四色冬日和 楡井 正隆
十二月拳を握る赤ん坊 森田 成子
何もなかったように冬の白波 廣川やよい
【米田主宰の選】
<火炎集>響焔2021年3月号より
根深汁とどのつまりは二人なり 石倉 夏生
さっきからここにいる山茶花のように 森村 文子
混沌とやまとまほろば雪ばんば 加藤千恵子
やすんじて母のふところ木の実落つ 西 博子
眼裏をさまよっている萩すすき あざみ 精
記憶の色はより白くシクラメン 波多野真代
木枯し一号名声は塵に似て 蓮尾 碩才
ゆっくりと染まる晩年室の花 小川トシ子
小包みのかすかに雪の匂いして 秋山ひろ子
朴落葉仇のごとく哭くごとく 北川 コト
<白灯対談より>
人生を語りだすチェロ春の宵 石谷かずよ
朧月何かが見えてあと無言 浅野 浩利
6Bで描く耳たぶ日永かな 小林 基子
ユトリロをモネに掛け替え菜種梅雨 小澤 什一
麦踏やいのちに触れる足の裏 加賀谷秀男
はくれんの直立不動外科病棟 金子 良子
釣糸にたゆたう光春惜しむ 佐藤千枝子
大くさめ微動だにせぬ八ヶ岳 畑 孝正
かりそめの紅はじきあいさくらんぼ 吉本のぶこ
残りたる月日を数え桜餅 齋藤 伸
春兆すアンパンマンの園児バス 横田恵美子
行く春のけんけんぱあの石畳 鹿兒嶋俊之
【白灯対談の一部】
人生を語りだすチェロ春の宵 石谷かずよ
ヴァイオリンもピアノも或いはサックスやフルートも、その演奏は広く云えば〝人生〟を語っているだろう。〝人生〟と大きく捉えなくても人の喜びや悲しみ寂しさなど、楽器を通して表現している。しかし作者は〝チェロ〟の演奏に〝人生〟を感じたのである。
〝チェロ〟の音色は決して華やかではないが、聴く人の心にじんわりと語りかけてくるようだ。〝人生を語りだす〟と云う措辞は作者の実感なのだ。来し方、行く末を想いながら〝チェロ〟の演奏に聴き入っている作者の豊かな〝春の宵〟を思った。
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