響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2021年5月号より

響焰2021年5月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202105

うしろから     山崎 聰

異常乾燥注意報下たまご酒
大雪予報生き延びて海を見て
おとこらの白髪白刃冬怒濤
にんげんの顔なつかしき雪の朝
人の世のおわり見ており雪の中
雪のにおい命終迫りくるにおい
梅ふふむかさりこそりと散歩みち
白梅紅梅生きているから転ぶ
春の夕暮ひたひたとうしろから
春だからついておいでよもうすこし

 

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202105

ものの芽       米田 規子

スカートのパステルカラー風光る
ものの芽光り目標の八千歩
一輪車の子春風の先頭に
トンネルの先のくらがり梅香る
くるくると二月三月本の山
はくれんの散り際空の軋む音
春昼のグランドピアノ深眠り
三色のジュリアン咲いて子の便り
木の芽雨きのうの続き今日もする
おぼろ夜の会えば笑っておんなたち

 

 

【山崎名誉主宰の選】(赤字は山崎先生の添削)

<火炎集>響焔2021年2月号より

外灯の中だけ赤い初時雨         石倉 夏生
烏瓜遠くが見えてさびしかろ       森村 文子
落葉降る身辺ときにうとましく      山口 彩子
柿の木に柿おおかたは空を見て      加藤千恵子
それぞれに違う寂しさ冬林檎       中村 克子
あおぞらや黄落は詩歌のように      大見 充子
どこも裏街十一月の池袋         松村 五月
ぱたぱたと赤子の手足小鳥来る      波多野真代
ふたりならしんじつ朱くポインセチア   河津 智子
晩節は十月桜みるような         大森 麗子

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2021年2月号より

赤とんぼ群れ来るみんなしあわせか    和田 浩一
会って別れるコリドー街晩秋       栗原 節子
烏瓜遠くが見えてさびしかろ       森村 文子
十五夜の月と老人かくれんぼ       加藤千恵子
えにしともほのあかりして冬桜      西  博子
恋心いろはもみじの紅のほど       大見 充子
浪漫派のひとつの形鳥渡る        松村 五月
ぱたぱたと赤子の手足小鳥来る      波多野真代
ふたりならしんじつ朱くポインセチア   河津 智子
角砂糖カップの底の小春めき       北川 コト

<白灯対談より>

雲間より光ひろがり春の航        佐藤千枝子
梅が香に遠くかすめり新都心       小澤 什一
春風や三面鏡にある浮力         吉本のぶこ
鶯の啼く声きみの山河かな        浅野 浩利
曇天に溶けゆく飛翔ふゆかもめ      齋藤  伸
大火鉢を囲む昭和のど真ん中       加賀谷秀男
山笑う過去も免許証も返す        金子 良子
何となく郵便受けへ春隣         石谷かずよ
一番に登校朝日のヒヤシンス       小林 基子
春待つや一輪挿しの伊万里焼       横田恵美子
受験の子赤き耳朶にて戻る        菊地 久子
節分草青空映す蕊の色          長谷川レイ子

【白灯対談の一部】

 雲間より光ひろがり春の航        佐藤千枝子

 読後に明るい未来を想った。希望あふれる一句と思う。

 頭の中のスクリーンに雲の映像、次第に雲が動きその隙間からひと筋の光が…、やがてその光が雲を割って溢れだす。海は陽光にきらめき、大きな船が動くともなくゆっくりと進みゆく、と云った風景を瞬時に思い描くことができた。

 掲句は、風景の切り取り、描写、着地が揃って豊かな広がりを持つ佳句となった。明るい詩情が心地良い作品である。これからも作者の個性を生かした作品を期待したい。

 同時発表句<拍手のこだまとなりて山の春>にも共鳴。


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