響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2021年4月号より

響焰2021年4月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202104

その日まで     山崎 聰

陽のまさに落ちなんとして柿の村
みんなが笑うわたしもわらう落葉焚
月の出のはじめみんなで鬼ごっこ
闇にうごく兎の耳のあかいところ
ひとりは寒し闇のなかから目鼻
冬晴れつづけ命終のその日まで
一月一日川むこうから陽が昇る
檻の象かすかにうごき初日の出
たいせつな人いなくなる二日の夢
とおいところにかあさんふたりさくら貝

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202104

ダウンロード     米田 規子

カフェラテのハートのゆがみ雪催
ふらんすや冬三日月の舟揺れて
山眠る粒のきらきら山の塩
長葱の青い切っ先本気なり
待春のダウンロードする楽譜
片っ端から消えゆく時間山笑う
紅梅白梅詩を探す一人なり
白鍵にかすかなる罅風光る
余寒かな水晶体のおとろえも
ひとつ終わり一つ始める春の山

 

【山崎名誉主宰の選】(赤字は山崎先生の添削)

<火炎集>響焔2021年1月号より

瑠璃色にくぐもっている蜆蝶       森村 文子
山眠る赤い魚の祀られて         渡辺  澄
邯鄲やもっとも遠きぽるとがる      加藤千恵子
人の世のうすくらやみを秋が逝く     西  博子
三日月黒いマリアのたなごころ      大見 充子
産みたてのたまごのような秋一日     松村 五月
ほのぐらき渦のなかなる秋夕焼      波多野真代
ふたつめの橋を渡れば白い秋       小川トシ子
ふさふさと子犬の背中今朝の秋      楡井 正隆
あいまいな大東京の鰯雲         大森 麗子

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2021年1月号より

虫籠の中の静けさただならず       石倉 夏生
陽が昇る露草のみち母の道        栗原 節子
秋らしくない秋の日か一行詩       森村 文子
おおかたは猫の領分十三夜        加藤千恵子
一歩ずつうしろ塞がり芒原        西  博子
晩秋のやまかわそらや笙の笛       あざみ 精
産みたてのたまごのような秋一日     松村 五月
山ひとつ越えて向こうも鰯雲       波多野真代
二つ目の橋を渡れば白い秋        小川トシ子
豊の秋ゆすれば眠る赤ん坊        小林多恵子

<白灯対談より>

寒梅や胸に沁み入る空の蒼        小澤 什一
おろおろと日本列島冬眠す        牧野 良子
寒きひと日を何度でも父のこと      平尾 敦子
日の色の枯葉舞い込む小物店       石谷かずよ
みちのくの戦後は遠く干菜汁       加賀谷秀男
冬帽子目深に本音少し言う        横田恵美子
新宿のビルを浮かせて冬の月       浅野 浩利
年用意漁港のほとりきらきらす      小林 基子
奪い合う空にかがみて土筆摘む      吉本のぶこ
三が日クシコスポスト聞くように     金子 良子
冬青空身の置き処探しいて        石井 義信
ペアガラス隔てて猫と寒鴉        齋藤 重明

【白灯対談の一部】

 寒梅や胸に沁み入る空の蒼        小澤 什一

 まだ寒さの厳しいころ、ちらほらと咲き始める〝寒梅〟を見つけると胸の内にもポッと明かりが灯るようだ。寒中に咲く花はなんて強いのだろうかと自然の力を思う。

 掲句は〝寒梅や〟の詠嘆が効いている。作者は〝寒梅〟に心を奪われながら、やがてその向こうの〝空の蒼〟に目を移し気持ちも〝空の蒼〟に吸い込まれてゆく。作者の心の翳りのようなものがこの〝空の蒼〟に表われている。〝胸に沁み入る空の蒼〟は読み手の心の中にも静かに広がってゆく。

« »

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*