響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2021年3月号より

響焰2021年3月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202103

おどろおどろ    山崎 聰

甲斐信濃一泊二日のいわし雲
流木は流木として鵙の昼
月の夜はゆっくり行こう奈落まで
ぼそぼそと泣いているなり山の柿
泣きごえが途切れてからの秋の暮
爛熟のあしたをおもい谿の秋
霜の朝鐘鳴りわたる村はずれ
雨のあとすこしはなやぎ残り柿
精神のおどろおどろを雪の朝
冬満月遠い人から白くなる

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202103

ひらいてとじて     米田 規子

もくれんの冬芽ふくらみ逢えぬ日々
トッカータとフーガ突き抜けて冬天
泥葱の束を抱えて風の道
ハッピーバースデイ冬の檸檬灯る
大声で笑うことなく雑煮椀
家中の音の華やぎ初荷かな
冬ざれや二人のベンチ探しいて
クレソンに水音やさし野辺の風
待春のひらいてとじて足の指
読みかけの本とコーヒー春の雪

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2020年12月号より

八月の白い花束沖に雲          栗原 節子
ぽっかりと浮かんでいれば九月かな    森村 文子
丸善は遠いところかレモンの黄      渡辺  澄
あまあまと風の新宿九月逝く       加藤千恵子
八月六日集まってきて小声        中村 克子
その中のひとつを探す曼珠沙華      西  博子
この世のものと思えば白く昼の月     松村 五月
秋が来る消印は風の色して        波多野真代
鰯雲夢をさがしに泣きながら       小川トシ子
秋晴や天秤棒の弥次郎兵衛        楡井 正隆

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2020年12月号より

水ありて月ありて森まるくなる      栗原 節子
申し訳なさそうに曼珠沙華いっぽん    森村 文子
黒服の中は真夏の荒野かな        中村 克子
てのひらの白桃沈み夜のとばり      河村 芳子
一人ずつ来てみな帰る秋の浜       松村 五月
秋が来る消印は風の色して        波多野真代
秋少し風に言葉のあるように       亀谷千鶴子
鰯雲夢をさがしに泣きながら       小川トシ子
銀やんまさみしい家を旋回す       秋山ひろ子
ひと粒は涙のかたち青葡萄        小林多恵子

<白灯対談より>

野路菊やこの道行けるところまで     浅野 浩利
再会は少女のわたし黄落期        牧野 良子
冬紅葉遠ざかりゆく貨車の音       小澤 什一
椿散り椿が咲いて火の匂い        吉本のぶこ
十二月どこからかジャズ流れきて     横田恵美子
ジェット音枯葉一枚降ってきて      加賀谷秀男
クレヨンの色の数ほど冬の星       佐藤千枝子
冬ばらの蕾の品位活けてより       菊地 久子
ひともとの欅落葉に日々の嵩       石谷かずよ
義士の日や肉まん餡まん二つずつ     金子 良子
見覚えのある冬帽やパチンコ店      小林 基子
木守柿人逝くさみしさから離る      平尾 敦子

【白灯対談の一部】

 野路菊やこの道行けるところまで     浅野 浩利

 平明なことばで易しく詠われている一句だが、この句を貫く作者の思いは揺るぎない。〝この道〟は作者が今歩んでいる道であり、迷いなく〝この道〟を進むという。そんな作者をやさしく見守ってくれるのが〝野路菊〟であり、作者の思いを託した季語なのだ。

 〝野路菊や〟と大きく切ったので、中七下五との直接的な関わりを避けることができた。その結果一句の空間が広がり、作者の意志が余韻として伝わってくる。良い作品だと思う。

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