響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2021年2月号より

響焰2021年2月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202102

お ろ お ろ    山崎 聰

雨空のいちにち長く残る虫
いわし雲どこからも人湧いて出て
秋の長雨無用の用かとも思い
阿Q正伝おろおろと残り柿
いわし雲無頼というはさびしかり
晴れつづくいっせいに柿色づいて
風の日はひたすらねむり青榠樝
もののふはいまもののふ残り月
亡きものは亡く季節はずれのさくら
いま無一物真夜中のスキー場

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202102

こ ろ が っ て     米田 規子

お日さまの匂いのタオル風邪心地
飛行機雲ほどけて淡く冬菜畑
出会いがしらの綿虫と三輪車
墓域明るく冬帽の婆三人
鍵盤をていねいに拭き冬の暮
揺れながらこころと体冬至粥
極月や一本道をころがって
選曲に迷いを残し大寒波
冬日燦一病ふっと貌を出し
ありったけの力を使い冬紅葉

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2020年11月号より

まっすぐに来る八月の白い馬       栗原 節子
卓上の薄紙うごく夜の秋         山口 彩子
大夕焼ころんで泣いて日和下駄      河村 芳子
みほとけのまなざしほうと秋の風     西  博子
らんらんと夏の終りはみな斑       大見 充子
蟻地獄見てそれからの私小説       松村 五月
蟬しぐれ止んで日暮の勝手口       秋山ひろ子
八月十五日父の山から喇叭        中村 直子
夏の雲流れ大型犬次郎          楡井 正隆
八日目の蟬鳴いてふとひとりかな     石井 昭子

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2020年11月号より

手に掬う水の輝き原爆忌         和田 浩一
犬も我も同じ犬掻きにて泳ぐ       石倉 夏生
鬼やんま昼間は誰も居ない家       栗原 節子
夕顔が咲くころ君の笑うころ       森村 文子
おしろいに風の自転車きて止まる     加藤千恵子
戦争の音する地球梅漬ける        中村 克子
敗戦をよしとするなり小母さんら     鈴 カノン
蟻地獄見てそれからの私小説       松村 五月
生国はいつも晴天だだちゃ豆       戸田富美子
山の日の山を遠くに眠るかな       秋山ひろ子

<白灯対談より>

愛犬に星の匂いやクリスマス       牧野 良子
極月や東京駅のBARの夜        小澤 什一
籠り居のまっさらな靴冬に入る      横田恵美子
まっすぐに生き抜く力花八ッ手      金子 良子
さりながらグランドゴルフ一打秋     相田 勝子
蔦紅葉愛されるほど赤くなり       加賀谷秀男
まなうらの冬日の中の一家族       佐藤千枝子
しぐるるや珈琲店の窓明り        齋藤 東砂
病床に詩を乞う人よ黄落期        石谷かずよ
十二月大工の槌の音高く         小林 基子
そくそくとこだまは赤く朴落葉      吉本のぶこ
鳥渡るするする抜ける仕付糸       菊地 久子

【白灯対談の一部】

 愛犬に星の匂いやクリスマス       牧野 良子

 〝この句は読んだ途端に一句がすとんと胸の中に落ちて、さらに詩情の広がる素敵な句だと思う。

 いつも作者の身近にいる〝愛犬〟に〝星の匂い〟がすると捉えたところに惹かれた。常日頃、感性のアンテナを磨いておかないと、なかなか〝愛犬に星の匂いや〟と把握できないと思った。そんな上五中七と〝クリスマス〟の取合わせにも夢があって、一句の味わいを深めている。身近のちょっとしたことを発見して詩情ある一句に仕立てるのは難しいかもしれないが、転がっている句材を見逃さないようにしたい。

 最近「俳句は難しい」とよく耳にするのだが、私自身もややはりそう思う。しかし掲句のような俳句に出会うと俳句の楽しさを感じて明るい気持ちになる。まずは小さな発見を大切に、心の中で思いをふくらませてみよう。

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