響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2023年7月号より

響焰2023年7月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202307

さくら散る       山崎 聰

山の雪きのう見てまたきょうも見て
立春をすぎたるころの山と川
もうすこし遊んでいたいさくらさくら
さくら見にさそわれており町に住み
急ごうかさくらが見えるところまで
もう一度ふりかえり見て春の月
さくら散って彼のことまた彼のこと
明日のことすこし思いて春の星
さくら散る縁側の隅っこにいてひとり
四月一日雨の休日として暮れる

 

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202307

夏 燕       米田 規子

新しい楽譜を広げ夏燕
聖五月きのうの私消している
うっすらと鏡の汚れ走り梅雨
遠雷や絵画の青いヴァイオリン
波長合う人の隣にほたるの夜
ざわめきの残る胸底赤い薔薇
はたた神二十四時間使い切り
男の子にこにこ無口夏木立
万緑やことばいくつか見失う
ドラえもんのマンガ古びて夕焼雲

 

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2023年4月号より

獣道つづく月下の枯木山         栗原 節子
鮮烈に目立たぬように春が来る      森村 文子
くすりにも毒にもなって春の月      渡辺  澄
大寒や大空ふかくあおくあり       岩佐  久
雪が降る敵に味方にゆきがふる      蓮尾 碩才
風花やひとりで渡る今日の橋       鈴木 瑩子
雪蛍ふるさと風と空ばかり        大森 麗子
燈台のらせん階段野水仙         中野 充子
寒九の雨街やわらかく静もりて      藤巻 基子
手の平に光をあつめ冬の浜        北尾 節子

 

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2023年4月号より

白梅が咲きそれからの一週間       森村 文子
哲学の色に染まりし夕枯野        中村 克子
去年今年こんがらがってまるまって    松村 五月
着ぶくれて年取って海青きかな      秋山ひろ子
漆黒のみちのく背(せい)高きカンナ    河津 智子
荒涼の冬の夕暮赤い帯          楡井 正隆
散り際のいのちの灯り寒椿        大森 麗子
このあたり東京の裏ポインセチア     廣川やよい
風のように不思議な人と冬木立      藤巻 基子
誕生日生まれるように覚めて雪      石谷かずよ     

 

 

【米田規子選】

<白灯対談より>

子規が呼んでる春の日のホームラン    金子 良子
ささやかれささやきかえす春の宵     池宮 照子
逝く春の星かがやかす風水師       梅田 弘祠
本堂をふわりと包む芽吹きかな      中野 朱夏
うぐいすや朝のしじまの水汲みて     原田 峯子
木の芽風厚き窓開く蔵の街        横田恵美子
花は葉に子らはキラキラ飛び回る     伴  恵子
少年の眼差し阿修羅ヒヤシンス      酒井 介山

【白灯対談の一部】

 子規が呼んでる春の日のホームラン    金子 良子
 この句を読んだとたんに笑顔になる、そんな一句。
  掲句の意味や話の筋などは気にならない。明るい春の空にカーンと云う音が響き、白球がカーブを描いて高く飛んでゆく様子が目に浮かぶのだ。〝春の日のホームラン〟の措辞は勢いがあり、読み手の心を摑む魅力がある。草野球でもプロ野球でも良い。ホームランの気持ち良さがこの俳句から瞬時に伝わってくる。
 掲句の導入には〝子規〟が登場する。正岡子規は野球にも熱中し、日本の野球に貢献した人でもある。だから〝子規が呼んでる〟の措辞には作者なりの思い入れがあるかもしれない。ただこの句の前半と後半を無理に意味付けしなくても良いのでは、と思う。あくまでも明るく軽やかな佳句だ。

 < イースター赤い袋の角砂糖 >
 〝イースター〟は日本人にとってあまり馴染のない行事だ。春分後、最初の満月直後の日曜日を云い、キリストの復活を祝う日である。作者が思いきって〝イースター〟を詠もうと決めたことに拍手を送りたい。〝赤い袋の角砂糖〟との取り合わせ、離れ具合などとても上手くできた作品である。

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