【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202306
さ く ら 山崎 聰
こえを出すこともなくなり寒の底
凧あがる天まであがりふと不安
やさしさとちがうぬくもりさくらの夜
花菜みち遠くから呼ばれたようで
男二人女三人さくらの夜
さわさわとさくらが散って夜のはじめ
明日からはがんばろうねと春の暮
さくら散ってこの世大きくなりにけり
葉ざくらの上野千駄木男とおる
二人並んでひらひらと五月雨
【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202306
新 緑 米田 規子
つくしたんぽぽ旅という別世界
一行詩生まれ新緑にそよかぜ
母むすめほど良く離れクレマチス
花ふぶき悠々自適なんて嘘
ラベンダーと遊んだしっぽ猫帰宅
若楓はにかんで言う「ありがとう」
どくだみの四五本抜いて旅の朝
見送りてもとのふたりに草若葉
悩ましい最後の五文字青嵐
花万朶その日うれいに支配され
【山崎名誉主宰の選】
<火炎集>響焔2023年3月号より
毛糸編む運河に潮の来る気配 加藤千恵子
陽の当たるただそれだけの木守柿 松村 五月
人といて人の寂しさ小春空 大見 充子
母眠り家眠り山眠りけり 秋山ひろ子
おもむろに雲がうごいて街師走 鈴木 瑩子
霜月のまんなかにいてとんがって 小林マリ子
路地裏は今も路地裏冬牡丹 石井 昭子
木枯しや多摩の子らには多摩の風 中野 充子
岬までまっすぐな道野水仙 廣川やよい
夜の音たとえば落ち葉重なりて 北尾 節子
【米田主宰の選】
<火炎集>響焔2023年3月号より
あたたかき今日のこの日の返り花 森村 文子
冬紅葉もういいかいと鬼の云う 加藤千恵子
十二月八日虚空より羽の音 中村 克子
遺されてなお山茶花のうすあかり 河村 芳子
北総の沼尻あたり初時雨 小川トシ子
一歩ずつ雪のきざはし父の家 川口 史江
もうすぐ会える冬青空の青の中 小林多恵子
少年のナイフに光る春日かな 吉本のぶこ
無防備な自由のさきに鹿鳴けり 小澤 什一
それぞれに細長い影冬の午後 北尾 節子
【米田規子選】
<白灯対談より>
金平糖は光のかけら春の風 横田恵美子
春一番とぎれとぎれのトランペット 伴 恵子
背景はいつも笑っている躑躅 池宮 照子
春疾風廊下の奥の火消し壺 原 啓子
月天心まっすぐ続く白い道 酒井 介山
友偲ぶ幹くろぐろと花の昼 原田 峯子
春の風突然止まる縄電車 金子 良子
裸木の影踊りだす風の大地 中野 朱夏
【白灯対談の一部】
金平糖は光のかけら春の風 横田恵美子
卓の上にピンクや白、水色などの金平糖がころがっていて春の光の中で煌めいている。まるで一枚の写真のような俳句だ。眼前の情景をきちんと詠い、鮮やかな一句である。
その中で作者の感じ取ったことが〝金平糖は光のかけら〟と云う措辞で、特に〝光のかけら〟がこの句の眼目と思う。
一方、結句〝春の風〟に意外性はないけれど、ごく自然な流れの中で掴んだ季語と思われる。この〝春の風〟が〝光のかけら〟と響き合って一句をより豊かにふくらませている。
春を待ちわびていた作者にとって金平糖の色や可愛い形などがまさに春の喜びなのだ。
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