響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2023年9月号より

響焰2023年9月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202309

雲 ひ と つ       山崎 聰

おぼろ月すこし歩いて町中へ
まいにちが日曜日ふとさくら咲く
憲法記念日青空に雲ひとつ
ゆっくりと歩こうさくらが咲いたから
空高く海は青くて子供の日
人間に遠く花過ぎのひとところ
なんですかああそうですか五月雨
なんということのない昼雨ぐもり
きのうきょう梅雨空しかし夜は晴れ
元気かいはい元気ですアマリリス

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202309

海 を 見 て       米田 規子

地下鉄の新しい街青ぶどう
黒南風やくねくね曲がる上り坂
カンナの黄の華やぐあたり睡魔くる
七月や自転車漕いで海を見て
細くほそく刻む甘藍背を丸め
パリー祭ピタピタ夜の化粧水
冷房の効いてぎくしゃくする二人
打水のあとの夕空深く吸う
ふるさとへ吾は旅人蟬時雨
四年目の半分が過ぎ緑陰に

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2023年6月号より

身の内の振り子が止まり朧なり      石倉 夏生
やわらかき雨となりたる四月馬鹿     栗原 節子
ゆっくりとひろがる昔ももさくら     森村 文子
春一番黒いかたまり追いかけて      中村 克子
春泥を跳んでこどもになる日暮      秋山ひろ子
春風駘蕩大きな声で赤子泣く       小林マリ子
菜の花の満開の道そのうしろ       大森 麗子
この国のこの店のこの桜餅        中野 充子
ゆく道はほの明りして涅槃雪       石谷かずよ
うかと喜寿棘を顕に山椒の芽       齋藤 重明

 

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2023年6月号より

足音の二つに別れ春の闇         石倉 夏生
やわらかき雨となりたる四月馬鹿     栗原 節子
ゆっくりとひろがる昔ももさくら     森村 文子
花万朶あしたの風を待つように      加藤千恵子
省略のできないあなた春時雨       松村 五月
春愁の出口思えりあおい海        小川トシ子
春泥を跳んでこどもになる日暮      秋山ひろ子
うつし世の春を呼ぶ色金平糖       石井 昭子
母と暮せば昭和の親し花杏        小林多恵子
花辛夷紙漉くように日の過ぎて      浅野 浩利

 

【米田規子選】

<白灯対談より>

白杖と捕虫網乗る始発バス        菊地 久子
くちなしの匂いを辿り遠い夜       中野 朱夏
裾からぐ浮世絵の女走り梅雨       伴  恵子
梅雨の蝶軒のしずくより生るる      池宮 照子
紫陽花の今日の色なりマティス展     牧野 良子
父の日のいつもの主役豆大福       金子 良子
どの色で引き返そうか七変化       長谷川レイ子
夏の日の規則正しき腹時計        森本 龍司

【白灯対談の一部】

 白杖と捕虫網乗る始発バス        菊地 久子
 子どもたちが待ちに待った夏休みがもうすぐやって来る。〝捕虫網〟を持って元気に駆け回る子どもたちの様子が目に浮かぶ。一方で視覚障害の人が日常的に使用される〝白杖〟。掲句は、この全く違う二つの「物」を取り合わせた俳句だ。さらに云えば、作者は対照的な二つの物だけに焦点を絞り、あえて人物などは詠っていない。だから読後の印象はかなり鮮明だ。早朝の〝始発バス〟に乗った作者は、眼前の光景を素早くキャッチしてこの一句を成した。大変良い作品と思う。

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