【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202310
月 の 夜 山崎 聰
ゆらゆらと春の日射しの中をひとり
八十八夜こえを出すこと忘れいて
硝子戸を雨粒たたききのう夏至
みんなであるくアカシアの花の下
与うべき何もなけれど夏の月
関東の片隅におり蜘蛛の糸
跳べそうでとべない高さ朝の月
房総に住んで十年秋の薔薇
台風の近づく気配きのうきょう
このあたり人住んでおり月今宵
【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202310
朝のストレッチ蜘蛛の囲の光かな
ぐらぐらの湯にパスタ投入夏の空
こころざしまっすぐありて緋のダリア
煮炊きしていのちをつなぎ夕焼雲
夏菊の束のカラフル母恋し
吾をしのぐ草の勢い八月尽
暑気中り脳の怠慢ゆるしおく
俳人とやペン走らせる音涼し
どかと残暑ポークソテーに黒胡椒
海は秋たった一人のはらからよ
【山崎名誉主宰の選】
<火炎集>響焔2023年7月号より
春風と男の背中神保町 松村 五月
山吹きのきみどりほどの記憶かな 小川トシ子
やわやわと雲いすわって花の冷え 山口美恵子
はろばろと大和の国の山桜 小林マリ子
閉店の旗揺らめきてつばくらめ 石井 昭子
桜満開ゆれながら迷いながら 大森 麗子
昨日でもあしたでもなく初蛙 小林多恵子
春疾風昭和のままの時計店 廣川やよい
夕暮の風待っている春落葉 藤巻 基子
風光る遠くに白い天守閣 北尾 節子
【米田主宰の選】
<火炎集>響焔2023年7月号より
折鶴のどこも鋭角三月忌 和田 浩一
古書店の聖書の中で亀が鳴く 石倉 夏生
二人づれとは永遠の春景色 渡辺 澄
春の夕焼かなしみの行きどころ 大見 充子
み仏の大きなお耳浅き春 岩佐 久
柿若葉そこまでならば歩けそう 和田 璋子
帰る家あり春月が山の上 秋山ひろ子
よばれたような風のむさしの春霞 鈴木 瑩子
山門は叩かず青葉風のなか 小澤 什一
清明や声がきこえて野へ山へ 北尾 節子
【米田規子選】
<白灯対談より>
前略用件のみにて蟬時雨 池宮 照子
木下闇ひとり深海魚のように 横田恵美子
夏蝶と別れてからのひとり旅 牧野 良子
老いる意味深く考え梅雨夕焼 梅田 弘祠
厨よりははの呼ぶ声夕端居 増澤由紀子
ひまわりのぽっと明るい出口かな 鷹取かんな
花茣座に太郎次郎の寝息かな 中野 朱夏
七月の何やら動く丘の上 山田 一郎
【白灯対談の一部】
前略用件のみにて蟬時雨 池宮 照子
子どもたちが待ちに待った夏休みがもうすぐやって来る。手紙や葉書を書く時、〝前略〟と云う便利なことばがある。季節の挨拶などは省いて、とりあえず〝用件のみ〟を書きたい時に使うことが多い。
掲句は日常の些細なことを見逃さず、句材として引っ張り出したところがお手柄だ。何でも俳句にしてしまう作者の俳句脳は、いつも活発にはたらいているらしい。
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