響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2023年11月号より

響焰2023年11月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202311

夏の月そのほか       山崎 聰

字余りも字足らずもよし月おぼろ
だまし絵のようないちにち夕ざくら
いまもなお桜満開ただねむる
房総の台地に住みて梅雨の月
東京は雨の日曜だが暑い
梅雨の月あっけらかんと笑いけり
歩こうか座ろうかまんまる夏の月
関東平野まっただなかの夕月夜
きのうきょう夏の満月崖の下
東京をはなれてからの盆の月

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202311

紅 林 檎       米田 規子

ブイヤベース夏の終わりの水平線
晩夏晩節ひたひたと波寄せて
藤の実を垂らして保育園の午後
雷鳴やピアノ弾く手を止められず
二百十日がんもどきに味浸みて
虫の闇すとんと深きねむりかな
祈ること安らぎに似て紅林檎
九月の影濃く群衆のうねりかな
一位の実青年サッと席ゆずる
細腕にてノコギリを引く文化の日

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2023年8月号より

住み古りて親しきものに夏の月      加藤千恵子
影置いて帰る一団さくらの夜       中村 克子
一心に歩くおかしさ山つつじ       河村 芳子
どうあがいても晩春のひざがしら     小川トシ子
屈託はこっぱみじんに春空に       河津 智子
遠くから大きなうねり聖五月       楡井 正隆
山深く子を待つように山桜        大森 麗子
鳶の輪の中うっすらと春の月       石谷かずよ
父の日の最も昏きそのうしろ       斎藤 重明
傘さして会いにゆきます花菖蒲      北尾 節子

 

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2023年8月号より

陽炎や無人駅にて待つ母子        渡辺  澄
少年と五月の風になる少女        加藤千恵子
笑うたび夏に近づく女の子        松村 五月
若葉してわが胸中の青い鳥        大見 充子
大扉閉じられており昭和の日       岩佐  久
草朧触れて冷たき足の裏         蓮尾 碩才
くちじゅうが緑のうふふ豆ごはん     秋山ひろ子
背すじ伸ばせと河骨に叱られる      佐々木輝美
山深く子を待つように山桜        大森 麗子
父の日の最も昏きそのうしろ       斎藤 重明

 

【米田規子選】

<白灯対談より>

里山で菓子を焼く人女郎花        中野 朱夏
いつよりを老人と云う黒葡萄       増澤由紀子
口ずさむ「五番街のマリーへ」晩夏    池宮 照子
もう少し眺めていよう鱗雲        伴  恵子
てっぺんを本気でめざす皇帝ダリア    牧野 良子
夏蝶は他界の使者か風の音        酒井 介山
魂祭大きな靴と小さな靴         金子 良子
夜濯ぎのパンと開いた花模様       横田恵美子

【白灯対談の一部】

 里山で菓子を焼く人女郎花        中野 朱夏
 一読、この情景は現実なのか、それとも空想の中の一風景なのか、あるいは絵本の一ページかもしれない…などと確かなイメージを描くことが少しむずかしかった。でもその分、多くのことを想像してこの一句がむくむく膨んだ。
 〝菓子を焼く人〟がキッチンでもなく洋菓子店でもなく、〝里山〟で菓子を焼くと云う。この句の入り方にとても惹かれて、掲句の世界の扉を開けてみたくなった。扉をひらくとマドレーヌやパウンドケーキの焼ける甘い匂いがすることだろう。〝里山〟のような長閑な場所で焼いたお菓子は特別においしく焼き上がるはずだ。焼いているのは、たぶん女性。結句〝女郎花〟の斡旋によって、芯は強いがたおやかで控え目な女性を想った。この不思議な一句を私は十分に楽しむことができた。

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