響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2021年12月号より

響焰2021年12月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→MeiyoShusai_Haiku_202112

卒   寿     山崎 聰

夕ざくらいのちのおわりたるあとも
彼彼等そしてわれらも卯月波
刃物よりことばの光る五月かな
東京を出るときひとり桐の花
蚊も蠅も壁に眠りて夜の地震
ひとり居のいちにち長し朴の花
八月某日卒寿というはさびしかり
蟬の木に蟬があつまり子とろ唄
空高く水かげろうの立つあたり
流星の落ちゆく先は彼の世とも

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202112

山  粧  う       米田 規子

体温計ピピピッ秋気澄みにけり
さみしさを束ねて真っ赤唐辛子
真実を見つめる勇気鵙猛る
マロングラッセむかしの恋の甘さかな
晩秋を大きく揺らしモノレール
竜淵に潜み医師の目わたしの目
同意書に名前を太く秋桜
肉じゃがの煮上がる匂い野分あと
一枚の壁に塞がれ鉦叩
甘んじてしばし休息山粧う

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2021年9月号より

騙し絵の廻廊に居り五月闇        石倉 夏生
すでに夏見えないものの見えぬまま    栗原 節子
うしろから夜が来ており濃紫陽花     加藤千恵子
青時雨たそがれはハイネのように     大見 充子
スカーレット・オハラあるいは夏の山   松村 五月
ふだん着のにおいのように梅雨が来る   波多野真代
生国はさびさびとして朱夏のころ     河津 智子
蛍袋夢の途中で夢を見て         石井 昭子
どこからか父青山椒をゆでたとき     笹尾 京子
今はただ旅人として夏の霧        廣川やよい

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2021年9月号より

米田規子主宰はお休みです。

【加藤千恵子光焰集作家の選】

<白灯対談より>

整いゆくオカリナ少しずつ秋       島 多佳子
小気味よき小豆の音や小笊振る      鹿兒嶋俊之
山のあなたへ長月のバラライカ      齋藤 重明
あなどれぬ女のちから梨を剥く      金子 良子
紫苑ゆれこんぺいとうのまるきとげ    小澤 什一
可惜夜に耳そばだてて風の萩       小林 基子
星月夜大航海の始まれり         加賀谷秀男
ワクチンを打って西瓜のよく冷えて    池宮 照子
東雲をひそやかに露草の羽化       石谷かずよ
秋日のどこへも行かずたれも来ず     浅野 浩利
煮凝りに灯の入るごとし寺山修司     吉本のぶこ
星月夜人影うかぶカフェテラス      佐藤千枝子
鰯雲犬といる時ついてくる        牧野 良子

 

【白灯対談の一部】

 整いゆくオカリナ少しずつ秋       島 多佳子
 先ず、破調ではあるがその違和感が全くな作品と思う。手の平で小鳥を包むようにして吹くオカリナの澄んだ音色は心が洗われるようだ
 掲句は、一句の背景となるものを一切語っていない。〝整いゆく〟の措辞が、眼目であり、鍵でもあろう。いくつかの景が考えられるが、読み手としては、悩むところであり、たのしむところでもある。
 〝整いゆく〟、〝少しずつ〟と時の流れを見せた表現も、魅力的であり、透明感のある佳句だと思う。
 本当は、近づいて来る秋の気配が、オカリナの音色を、整えているのかも知れぬ。

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