響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2022年1月号より

響焰2022年1月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202201

こ れ か ら     山崎 聰

捕えたる蠅一匹のあと始末
さあこれからというときの朴の花
釣舟草神殿は近くにありて
人の世のおわりもすこし桐の花
村へ山へ街へ夏シャツ夏帽子
人生にもっとも遠く山の滝
ちちははの山川とおく彼岸花
海に流れて山上のひとつ星
出来ぬこといくつかふえて山の秋
草原をみんなであるく秋の暮

 

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202201

冬  椿       米田 規子

ぼんやりと過ぎゆく一と日木の実降る
一病を得て南天の実の真っ赤
冬日向プラットホームの固い椅子
父の声ははのこえ聴き白山茶花
満月にうさぎを探す術後かな
病室の四人湘南の冬ぬくし
眠る山いのちひとつを持ち帰る
湧き上がる力いま欲し冬椿
短日のアールグレイと電子辞書
赤い靴棚にねむりてクリスマス

 

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2021年10月号より

月下美人生まれるまえのまくらやみ    森村 文子
人体の深きところに青葉木菟       中村 克子
沈黙の罠うつくしき蜘蛛の糸       西  博子
みんみんの青い日暮を待つように     大見 充子
望郷はうす紫に合歓の花         小川トシ子
生き方逝き方翻弄されて晩夏       河津 智子
ひまわりや今も戦後の風吹いて      石井 昭子
炎天や傾いている大東京         大森 麗子
死は易く生はヤブ蚊に悩みける      川口 史江
新しい風景に置く夏帽子         小林多恵子

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2021年10月号より

生国を一周したる夏帽子         渡辺  澄
東京をどこまでゆけば夏の海       加藤千恵子
戦前も戦後も同じ蠅叩          中村 克子
はは泣いてわれを叱りし実梅かな     西  博子
みんみんの青い日暮を待つように     大見 充子
縦書きの手紙のように夏の雨       松村 五月
ぼんやりと半分咲いて百日紅       波多野真代
またひとつ無くして帰る炎暑かな     和田 璋子
よき風の通る家なり水羊羹        相田 勝子
新しい風景に置く夏帽子         小林多恵子

【加藤千恵子光焰集作家の選】

<白灯対談より>

抱卵の鮎焼く頃かおらが村        齋藤 重明
三番まで歌う軍歌よ残る虫        島 多佳子
枯れたくて枯れたのではないすすき原   北尾 節子
生きられるはず百歳の柿すだれ      梅田 弘祠
紫をはおれば母を濃竜胆         佐藤千枝子
歳重ね見ゆるものあり吾亦紅       横田恵美子
吊橋を渡るも勇気紅葉狩         増澤由紀子
草の花杖を忘れて歩き出す        金子 良子

 

【白灯対談の一部】

 抱卵の鮎焼く頃かおらが村        齋藤 重明
 生きものには、親が卵を抱えて温めることで一つの尊いいのちを形成できる慈しみ深い姿がある。
 抱卵という言葉には何ものにもかえがたい情を感じる。
 〝鮎焼く頃〟と断定せず、〝か〟と詩情のある表現にとどめ、読み手は引き込まれていく。
 抱卵の鮎は、単なる鮎ではないことに気持が揺らぐ。生活感のある〝おらが村〟が効果的である。
 作者のむかし見たものが今もキラキラしている佳句である。

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