【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202202
そうはいっても 山崎 聰
さくら散ってふと散骨を思いけり
そうはいってもさくらの花の下はひろい
勝ちは勝ち負けは負けなり遠桜
昼よるとさかなを食べてみどりの日
よもすがら哭いているなり青葉雨
新緑というには遠き山と川
もうすこし寝てていいからほととぎす
ゆっくりと音過ぎていき夏おわる
もうすこし待ってくれれば夏が来る
街はいま人人人の敗戦日
【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202202
ポトフの湯気 米田 規子
ヨーグルトに蜂蜜冬日ほしいまま
花アロエするりと猫の細いしっぽ
朽ちやすき木の家なれど冬日燦
仏蘭西を語るポトフの湯気立てて
自愛か怠惰かそろそろ雪おんな
実万両ゆるりゆるりと癒えはじむ
海の向こう聖樹に集う三世代
生きるとはさわがしきこと大根煮る
ひとりふたり十人去りて山に雪
師走の灯訣別のごと髪切って
【山崎名誉主宰の選】
<火炎集>響焔2021年11月号より
ゆたかさに狎れてさみしい葉鶏頭 栗原 節子
波打際遠しさくら貝なお遠し 森村 文子
今生のあれも秋なりこれも秋 加藤千恵子
八月の空この坂の向こうにも 松村 五月
ポケットにかるい秘密も夏休み 小川トシ子
風紋の先は青空秋の声 楡井 正隆
真実のその先きっと青芒 小林マリ子
空蟬ひろうただそれだけの日曜日 中野 充子
日のなごり風のなごりの蟬のこえ 小林多恵子
関東をどす黒い風稲の花 廣川やよい
【米田主宰の選】
<火炎集>響焔2021年11月号より
行儀よく二列の卵敗戦忌 石倉 夏生
みな帰るから帰り八月の海 森村 文子
風鈴に声をあつめて真くらがり 渡辺 澄
炎昼の奥にヒロシマゆれている 中村 克子
いつの間にちいさな歩幅片陰り 河村 芳子
稲光家のすみずみまるく掃く 岩佐 久
八月の空この坂の向こうにも 松村 五月
列島の雨ざんざざざ秋立つ日 波多野真代
こころ青むまでかなかなしぐれかな 秋山ひろ子
思い出は暮色にまぎれ秋桜 石井 昭子
【蓮尾碩才朱焰集作家の選】
<白灯対談より>
大花野いつもの道が一直線 牧野 良子
点眼す窓に流るる鰯雲 原田 峰子
むかご飯なまり自在に転校生 佐藤千枝子
十三夜旅先からのラブレター 原 啓子
時鳥草雨雲ひくき峠道 金子 良子
こだましてあの夏山の向こうがわ 北尾 節子
秋の空しきりに動く馬の耳 横田恵美子
女子校のチャペルに朝日赤とんぼ 朝日 さき
【白灯対談の一部】
大花野いつもの道が一直線 牧野 良子
北海道の富良野や箱根の仙石原、阿蘇の草千里など、日本には草原が沢山あり、季節ごとに趣のある花が見られます。しかし花野と言えば俳句では、秋の草花が咲き乱れている草原をさす秋の季語となっています。
春の生命力にあふれた華やかな風景に比べ、秋の野原には一抹の寂寥感が漂っているのではないでしょうか。そんな大きな花野を作者はいつも散歩しているのだろうか。いつもは草花で道がよく分からないのに、秋の今は枯草のせいか真っすぐな道になっていた。〝一直線〟と言い切ったところに〝花野〟の広さを改めて発見した思いが出ている句になりました。
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