【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202303
あいついまごろ 山崎 聰
青空の奥も青空赤とんぼ
秋はじめ本郷通り風吹いて
虫の夜あいついまごろどうしてる
地震のあと神鳴り三たびそして雨
どんぐりを踏んでたしかに生きている
ことし逝きたる誰彼のこと十一月
日暮れはさびし雪止みしあとはなお
きのうきょう杖突いてゆく落葉道
九十一歳雪の中雪を被て
落葉みち東京という大都会
【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202303
天 の 声 米田 規子
冬枯や朝の匂いの目玉焼
黙々とはたらく背中冬ぬくし
限りなく枡目を埋める冬の星
一月や日の温もりの大きな木
忙中の閑を探して冬木の芽
冬帽子風吹き止まぬ胸の中
悴めりスマホに時間奪われて
山眠る縷々と血脈うけつがれ
裸木のみな宙を指し天の声
好日やこんにゃくを煮て着ぶくれて
【山崎名誉主宰の選】
<火炎集>響焔2022年12月号より
墓のみち坂道容赦なき残暑 栗原 節子
じゅうぶんに老人になり曼珠沙華 森村 文子
障子貼るこの世にわたしのいるかぎり 渡辺 澄
その先は舟でゆきたし十三夜 加藤千恵子
拠りどころなければ歩き夜の秋 松村 五月
泣かないで木槿の花の咲いただけ 大見 充子
海暮れてふりむくこともなく晩夏 秋山ひろ子
夏鶯柱磨いて夕暮れて 楡井 正隆
あなたの眼あなたの青空レモン切る 小林多恵子
山と川草と家在る秋の暮 吉本のぶこ
【米田主宰の選】
<火炎集>響焔2022年12月号より
母戻るころかなかなの声しきり 栗原 節子
初嵐未来のことは忘れけり 渡辺 澄
その先は舟でゆきたし十三夜 加藤千恵子
拠りどころなければ歩き夜の秋 松村 五月
歩かねば明日が遠く秋日傘 和田 璋子
遊びたい猫とカマキリ昼の月 秋山ひろ子
あんなことこんなことなど夏のはて 相良茉沙代
赤とんぼあとすこしだけここにいる 石井 昭子
先生の捩じり鉢巻秋の雲 廣川やよい
山と川草と家在る秋の暮 吉本のぶこ
【米田規子選】
<白灯対談より>
冬ざれやスキップする子の赤い靴 伴 恵子
蒲色の秋を漕ぎゆくふたりづれ 中野 朱夏
初雪やお地蔵さまの欠け茶碗 菊地 久子
極月をじっと見下す鴉かな 金子 良子
寒泉のおもて平らかならずして 池宮 照子
万葉の風そよぐころ杜鵑草 牧野 良子
山茶花や優しい声が遠くから 原 啓子
インバネス祖父の矜持の厚さかな 増澤由紀子
【白灯対談の一部】
冬ざれやスキップする子の赤い靴 伴 恵子
この冬もクリスマスの煌めくイルミネーションに始まり、年末年始の行事がひと通り終わるころ、あたりは日常の貌を取り戻し、本格的な寒さと〝冬ざれ〟の蕭条たる木立や街並はモノトーンの世界へと変化する。〝冬ざれ〟と云う季語は単に目の前の景色を表わすだけでなく、なにか人の心にも寂しさを感じさせるようだ。
掲句はそんな〝冬ざれ〟と〝赤い靴〟との取り合わせで、一気に世界が明るくなった。しかも〝スキップする子〟が登場して、冬の寒さにも負けない元気な様子が目に見えるようだ。〝スキップする子の赤い靴〟は、スキップする子どもの活発な動きと、モノトーンの風景の中の〝赤〟を際立たせていて生命力を感じた。平明なことばを使い、詠いたいことがしっかり表現できている作品だ。
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