響焰俳句会

ふたりごころ

響焰2023年4月号より

響焰2023年4月号より

【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202304

十 二 月       山崎 聰

めがねはどこにカチカチと冬の夜
秋の長雨らし東京の石だたみ
すこし寒くなって東京の奥の奥
とちぎは寒しとうきょう眩し丘の上
深川のまんなかあたり冬の晴れ
霜柱踏んでたしかに生きている
今日のことだけを思いて雪の中
雲か雪か遠山の日暮れどき
ひそかなるたのしみ大雪のあとの景
十二月こころを軽くして町へ

 

【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202304

雲 湧 い て       米田 規子

人の輪をいっとき離れ紅椿
寒禽の声とんがって検査の日
梅の香やきのうと違う雲湧いて
春の匂いきょうやわらかき空の青
抜かれゆく血のワイン色春寒し
薄氷や見えないものに目を凝らし
梅ひらき睫毛のながい男の子
はじめてのピアノのドレミ春の雲
ふくふくと茶葉のひろがり春彼岸
生も死も風にふるえてクロッカス

 

【山崎名誉主宰の選】

<火炎集>響焔2023年1月号より

萩の花こぼるる日暮呼ばれいて      栗原 節子
いもうとのすぐ泣きやんで暮早し     渡辺  澄
仲秋の眠れば澄みて笙の笛        大見 充子
ほろほろと父の晩年銀木犀        小川トシ子
小鳥来る幸せそうな形して        秋山ひろ子
あれこれとこれもあれもと夏のはて    相良茉沙代
風の先見えるはずなく十一月       鈴木 瑩子
群衆のうしろの翳り十三夜        大森 麗子
やわらかくひと日は暮れて赤のまま    大竹 妙子
ほつほつと愛おしき日々茨の実      石谷かずよ

 

【米田主宰の選】

<火炎集>響焔2023年1月号より

雑木山冬の足音近づけて         栗原 節子
秋高しあるいてゆけるところまで     加藤千恵子
人の目に黙に疲れて秋灯         中村 克子
仲秋の眠れば澄みて笙の笛        大見 充子
晩秋や大川わたり清州橋         岩佐  久
鰯雲引き返すにはもう遅い        蓮尾 碩才
秋日和ひかりと影の交差点        小川トシ子
風の先見えるはずなく十一月       鈴木 瑩子
秋惜しむ安達太良山の空の青       小林マリ子
雲の峰モーゼは海を割り進み       齋藤 重明

 

【米田規子選】

<白灯対談より>

冬の床つくやたちまち孤島なす      池宮 照子
冬銀河かなわぬ夢はポケットに      横田恵美子
元旦や我をつらぬく光の矢        伴  恵子
乾物に磯の香ほのか喪正月        菊地 久子
太陽のひかり整い梅二月         牧野 良子
晩節は落ち着かぬもの花八ツ手      金子 良子
干蒲団ただそれだけの平和かな      黒川てる子
畳屋の軒の鳥籠小春の日         原  啓子

【白灯対談の一部】

 冬の床つくやたちまち孤島なす      池宮 照子
 一読、真冬の夜の寒さに身も心も凍るような気がした。それでもこの句に惹かれたのは、私自身大いに共鳴できたことと、個性的な詠い方に迫力があったからだ。
 掲句の内容を俳句で詠おうとすると、ともすれば散文のようになりがちだと思うが、中七で〝つくやたちまち〟と切って俳句のリズムに乗せたところが良かった。音楽に例えれば〝つくや〟〝たちまち〟それぞれにアクセントが付いている感じがして、その措辞が力強い。
 〝冬の床〟がたちまちにして〝孤島〟のようになると云う大変厳しい心情を吐露した俳句だが、拵え方に工夫があり、魅力的な一句となった。
 <初夢のあらすじ描き熟睡す> 最初の句とは対照的でとても楽しい一句だ。予め〝初夢のあらすじ〟を考えておくとはユニークな発想だ。しかも結句〝熟睡す〟と着地して遊び心たっぷりの俳句で面白い。

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