【山崎名誉主宰の俳句】縦書きはこちら→ MeiyoShusai_Haiku_202308
さあどうする 山崎 聰
清明や戦車がとおる男とおる
春の星ささやくようにつぶやくように
もうすこし小さなこえで春の夜
東京は快晴なれど梅雨近し
いちにちはやはり一日五月雨
西空に雷雲湧けりさあどうする
房総を出てより久し夜半の月
ビー玉をころがしている霧の夜
もうすこし走れば越後月今宵
この世なおもうすこしあり朴落葉
【米田主宰の俳句】縦書きはこちら→Shusai_Haiku_202308
明 日 葉 米田 規子
俤のあるにはありて梅雨の星
六月や鍋に小さな疵の増え
明日葉をパリッと揚げて健やかに
父の日の直立不動のちちであり
でで虫や朝からねむい日の手足
調律が終わりアガパンサスの昼
若返ることの叶わぬ更衣
夏草や紙と鉛筆無力なる
思い出の半分以上夏の海
夕空青く夏の匂いのバスタオル
【山崎名誉主宰の選】
<火炎集>響焔2023年5月号より
戦中の遠い虚空へ鳥帰る 石倉 夏生
おもいおもいに桜の下の少女たち 森村 文子
春夕焼エンドロールのひとりひとり 加藤千恵子
ややあってやがて離れて春の雪 松村 五月
春満月曲がりくねった道の先 波多野真代
ていねいにお辞儀してゆく二月かな 小川トシ子
一月おわるひとかたまりの雲のこり 鈴木 瑩子
齟齬ありてそっと夜明けの霜を踏む 大森 麗子
早春やいつもの道のいつもの灯 廣川やよい
遠山に雪降りはじめ明日のこと 北尾 節子
【米田主宰の選】
<火炎集>響焔2023年5月号より
ぼろぼろの戦車を浮かす寒月光 石倉 夏生
三月の海とさくらと少年と 森村 文子
三叉路の一つは過去へ亀鳴けり 中村 克子
ひとつずつ落ちて椿のあかや赤 松村 五月
あこがれというは菫のようなもの 波多野真代
枯れるまで夢の続きを寒卵 蓮尾 碩才
少年は大きな気球春立ちぬ 戸田富美子
ポケットの鍵の冷たく三番線 山口美恵子
雨ざらり虚空ざらざら渋谷春 吉本のぶこ
かたかごの花地に足は着いているか 小澤 什一
【米田規子選】
<白灯対談より>
山藤のおちこち烟る岨の道 増澤由紀子
あのころの風に会うため春ショール 牧野 良子
夏隣り玄関先に迷い猫 山田 一郎
古墳より呼ばるる男五月闇 中野 朱夏
つばめ飛ぶ風を二つに切って飛ぶ 横田恵美子
境界のあやうさを這う浜昼顔 池宮 照子
しりとりのキリンで終るこどもの日 金子 良子
朧月スマホに残る母の声 原 啓子
【白灯対談の一部】
山藤のおちこち烟る岨の道 増澤由紀子
一枚の水彩画のような俳句で、淡い色彩の風景がこの一句に息づいている。。
作者は日頃いろいろな場所に出かけて俳句を詠んでいるようだ。その積み重ねはとても貴重なことだと思う。
掲句の〝岨の道〟は、山の切り立った斜面を縫うように造られた細い道だろうか。そういう険しい場所から〝山藤〟を眺めた作者はきっと感動したに違いない。〝おちこち烟る〟と云う措辞に〝山藤〟の咲きようがわかるのだ。まさに実感だったと思われる。眼前の風景をしっかりと作者のことばで一句に仕立てたところが良かった。